本研究では、従来のダイヤモンドライクカーボン(DLC)膜に比べて機械的特性、熱的安定性などが向上するシリコン(Si)および窒素(N)を添加したDLC膜(Si-N-DLC膜)の研究開発を行う。 SiおよびN源としてヘキサメチルジシラザンを用いたプラズマ化学気相成長(CVD)法により作製条件を変化させたSi-N-DLC膜を評価した結果、以下のことが明らかになった。Si-N-DLC膜の摩擦係数は600℃の加熱試験後も0.1以下の低摩擦係数を維持した。また、Si-N-DLC膜の作製時の基板バイアス電圧を増加させることにより、熱処理による比摩耗量の増加が抑制されることが明らかになった。 Si源にジメチルシラン(DMS)およびN源に窒素ガスを用いたプラズマCVD法により作製条件を変化させたSi-N-DLC(DMS+N2)膜を評価し、SiおよびN源としてHMDSを用いたプラズマCVD法によるSi-N-DLC(HMDS)膜との比較を行った結果、以下のことが明らかになった。SiおよびN含有量がほぼ等しいSi-N-DLC膜を比較した結果、Si-N-DLC(HMDS)の方がSi-N結合を多く含んでいることがわかった。Si-N-DLC膜の内部応力は、無添加DLCやSi添加DLC(Si-DLC)に比べて小さく、密着性が向上することがわかった。また、Si-N-DLC(DMS+N2)の摩擦係数はSi-DLCおよびSi-N-DLC(HMDS)と同程度かより低い値を示すと共に、比摩耗量は無添加DLCと同程度の低い値を示した。 Si添加炭素ターゲットおよび窒素ガスを用いたレーザーアブレーション法によるSi-N-DLC膜を評価した結果、以下のことが明らかになった。適切な作製条件において、同法で作製したSi-DLC膜よりSi-N-DLC膜の密着性は高く、無添加DLC膜より摩擦係数は小さくなることがわかった。
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