研究課題/領域番号 |
24560813
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研究機関 | 独立行政法人物質・材料研究機構 |
研究代表者 |
佐原 亮二 独立行政法人物質・材料研究機構, その他部局等, その他 (30323075)
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研究分担者 |
水関 博志 東北大学, 金属材料研究所, 准教授 (00271966)
ベロスルドフ ロディオン 東北大学, 金属材料研究所, 准教授 (10396517)
川添 良幸 東北大学, 学内共同利用施設等, 名誉教授 (30091672)
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キーワード | 第一原理計算 / 解離反応 / 全電子混合基底法 / ホウ化物 / 水素貯蔵材料 |
研究概要 |
本研究の目的は、第一原理計算により、水素貯蔵材料の電子状態解析や安定性解析を行い高密度化のための指針を得ることである。本研究で使用するプログラムの一つとして、申請者が開発メンバーのひとりである第一原理計算プログラム「全電子混合基底法プログラムTOMBO」を用いる。申請者は、本プログラムに時間依存密度汎関数理論を導入し、電子の励起状態を考慮したシミュレーションを実行することを可能とした。水素分子の担持金属への解離吸着のシミュレーションが可能である。本過程は、スピルオーバープロセスの素過程のうち、初期の段階に対応する。 本年度は、本プログラムコードをいくつかの計算機上で実行することで動作を確認し、さらなる効率化について検討を進めた。また、水素貯蔵材料は、その高密度化のために主として軽元素から構成されることが期待される。本年度は特にこの点に注目し、上記の研究に加えて、軽元素から構成される材料の例としてホウ素、アルミニウム、イットリウムから構成される多ホウ化物系を導入し、その基本的特性として安定構造および電子状態の解析をおこなった。本系はアルミニウムが部分占有することが実験的に明らかになっている。そのため、第一原理計算実行時に、様々な配置を考慮しエネルギーを比較することで、その安定構造を決定した。その結果、本化合物の電子状態のアルミニウム濃度依存性を明らかにすることができた。 得られた結果の一部については、学会における発表の他、書籍「水素技術修正Vol.4」において、「全電子混合基底法プログラムを用いた水素貯蔵材料設計」というタイトルで発表した。また国際会議での招待講演が2件ある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では励起状態を考慮した時間依存密度汎関数理論(TDDFT)により、水素分子の担持金属への解離吸着シミュレーションをおこなっている。本過程は、スピルオーバープロセスの素過程のうち、初期の段階に対応する。本研究で得られた成果を含め、申請者のグループがおこなった水素貯蔵材料設計の研究の成果は、書籍「水素利用技術集成」にまとめられた。 さらに、軽元素から構成される材料の一例としてホウ化物に注目し、その安定構造や電子状態を解析した。ホウ化物の電子状態のアルミニウム濃度依存性を詳細に明らかにすることができた。
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今後の研究の推進方策 |
本年度は、前年度に引き続き、全電子混合基底法プログラムTOMBOの整備を進める一方、軽元素から構成される化合物の例として、多ホウ化物の電子状態解析、安定構造の解析をおこなう予定である。本課題については、平面波基底のプログラムを利用する予定である。これらの本研究により、新規水素貯蔵材料開発のための指針を得ることが可能となる。なお、本化合物を構成する金属元素は部分占有をすることが分かっているため、その安定構造を決定するには、様々な配置を仮定して大規模計算を多数実行する必要がある。そのため、計算機の増強を図る必要がある。本プロジェクトで増強する計算機は、上記第一原理計算の実行に加えて、TOMBOコードの解析サブルーチンの作成、結果の解析、テスト実行などにも用いる。特に、短期間で集中的にプログラムを整備するためには、申請者が長時間占有できるコンピューターが必須である。 また、本研究の主要な計算の一部は、申請者が所属する(独)物質・材料研究機構が所有するスーパーコンピューターを利用するが、本年度はリプレースが予定されており、未稼働期間が発生する予定である。当該機関の研究の遅れを生じさせないために、外部のスーパーコンピューターを利用する必要がある。本研究では、そのための計算機使用料を計上する。研究成果発表は、国内会議(日本金属学会など)や国際会議にておこなう。そのための旅費を計上する予定である。さらに学術論文の投稿を予定しているが、その際、外国語論文の校閲が必要である。
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次年度の研究費の使用計画 |
申請者の所属先が、本プロジェクトを申請した当時に所属していた東北大学金属材料研究所から、2013年3月に(独)物質・材料研究機構へ変更になったため、着任直後に研究の進捗に少しの遅れが生じたため。なお、この遅れは、使用計画に記載するように、本年度で回復する予定である。また、本助成金により参加する予定であった国際会議へ、他の助成金を利用して参加することができたため、その分の差額が生じた。 前年度の研究の遅れを回復し、計算の進捗を図るために、計算機を増強する。また、他機関の計算機を利用することで研究の進捗を図る予定である。そのためのサーバー購入費および計算機使用料を計上する。また、本研究で得られた結果は、国際会議および学術論文で発表する予定である。そのための旅費の計上および、論文投稿料、英文校正のための費用が生じる。
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