研究課題/領域番号 |
24560815
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 山形大学 |
研究代表者 |
松嶋 雄太 山形大学, 理工学研究科, 准教授 (30323744)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 蛍光体 / レア・アースフリー / バナジン酸 / バナジウム / 発光メカニズム / 材料設計 / 持続的発展社会 |
研究概要 |
蛍光体は、紫外線やX線、電子線を可視光などに変換する一種のエネルギー変換材料であり、無機蛍光体は現在無機EL、白色LED、蛍光灯、プラズマディスプレイ、畜光材などに利用されている。一方、多くの蛍光体には希土類元素(レア・アース, RE)が添加されており、資源枯渇や地政学的要因が安定供給に対する懸念因子として現実化している。そのような背景に対し本研究では、「希少元素に頼らない機能材料開発」の一環として希土類元素を含まない蛍光体-レア・アースフリー蛍光体-の開発に取り組んでいる。それは、オキソ金属酸イオンであるバナジン酸イオン(VO4)3-を発光中心に利用するもので、その成果は持続的発展社会実現のための基盤技術になるものと期待される。 平成24年度は発光メカニズムの解明に重点をおいた研究に取り組んだ。一連のバナジン酸塩化合物系蛍光体ではVO4四面体が発光中心として機能するにも関わらず、塩を形成する陽イオンの種類に応じて発光色が変化するという特徴があり、これまでその原因の詳細は明らかではなかった。それに対し、X線吸収スペクトル測定や励起-発光スペクトル測定、量子収率測定などを用いて、一連のバナジン酸塩化合物系蛍光体の基礎物性を評価した結果、VO4四面体中のV-O距離と発光波長の間に相関があることを見出した。 また、その考察に基づきVO4四面体のO2-の一部をF-に置き換えたバナジン酸塩化合物を合成した結果、これまで達成できていなかった長波長(赤色)発光を示すバナジン酸塩化合物蛍光体の合成に成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成24年度の研究で、一連のバナジン酸塩化合物系蛍光体における発光のメカニズムのうち、発光色を決定する因子を特定することができた。また、明らかになった発光メカニズムに基づいて材料設計を行った結果、これまで達成できていなかった長波長領域(赤色)の蛍光を示す化合物の合成に成功した。これらの成果の一部は既に第51回セラミックス基礎科学討論会(H25.1)で発表した。また、平成25年度中に第13回ヨーロッパセラミック協会国際会議(ECerS 2013) (フランス, H25.6)、第2回無機および環境材料に関する国際シンポジウム(ISIEM 2013) (フランス, H25.10)、平成25年度化学系学協会東北大会及び日本化学会東北支部70周年記念国際会議(H25.9)の3件の国際会議で発表を予定している他、日本セラミックス協会、電気化学会、日本化学会、無機マテリアル学会などの年次大会において発表を予定するなど、当初の研究計画どおり順調に成果を上げている。
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今後の研究の推進方策 |
平成24年度の研究において発光色を決定する因子をほぼ特定できたものの、依然としてそのメカニズムに不明な点が残る。特に、類似の組成のバナジン酸塩化合物において蛍光を示すものと示さないものが存在するなど、発光そのものを決定する因子を特定できていないのが現状である。また、平成24年度の研究でVO4四面体中のV-O距離と蛍光発光エネルギーの間の相関を見出したが、一部の化合物がその相関から外れるなど、既往の報告でされている結晶構造に不正確な点があることがわかってきた。 平成25年度は、より高精度な発光色制御および発光効率向上を可能にするために、我々が合成しているバナジン酸塩化合物の結晶構造の精密化を実施し、VO4四面体周囲の局所的な構造を明らかにする。そして、DV-Xα法による分子軌道計算を併用して、発光中心となるV周囲の局所環境とVの電子状態の間の関係を明らかにする。平行して、発光効率を決定する因子を解明し、その知見を合成法の最適化にフィードバックすることで発光効率の向上を実現する。 以上のように、当初の計画通り平成25年度の研究を推進する。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度使用額は主に第13回ヨーロッパセラミック協会国際会議(ECerS 2013)に対する参加登録費(750ユーロ≒95000円)に充当する。当該研究費が生じた理由は、成果を上げた年度(H24年度)、参加登録期間(H24.3~4)、国際会議開催(H25.6)の三者間に時期のずれがあり、年度をまたぐ形で参加登録がされたためである。参加登録費に充当した後の残額は消耗品の購入に充てる。 平成25年度中に3件の国際学会と、複数件の国内学会での関連研究の発表を予定しており、平成25年度の研究費の一部はそのための旅費に充てる。研究遂行に必要な分析機器・合成装置は基本的に揃っているため、旅費以外の平成25年度研究費の主要な部分は、研究を円滑に進める上で必要な消耗品の購入に充当する。 以上のように、当初の計画通り平成25年度の研究経費を使用する。
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