研究課題/領域番号 |
24560815
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研究機関 | 山形大学 |
研究代表者 |
松嶋 雄太 山形大学, 理工学研究科, 准教授 (30323744)
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キーワード | 蛍光体 / レア・アースフリー / バナジン酸塩化合物 / バナジウム / 発光メカニズム / 材料設計 / 持続的発展社会 |
研究概要 |
蛍光体は、紫外線やX線、電子線などの高エネルギー照射を可視化する機能材料であり、現在無機蛍光体は、無機EL、白色LED、蛍光灯、プラズマディスプレイ、畜光材などに利用されている。一方、多くの蛍光体に希土類元素(レア・アース, RE)が添加されており、資源および地政学的要因による安定供給が問題視されている。そのような背景に対し、筆者は「希少元素に頼らない機能材料開発」の一環として、オキソ金属酸イオンであるバナジン酸イオン(VO4)3-を発光中心に利用したバナジン酸塩による、希土類元素を含まない蛍光体-レア・アースフリー蛍光体-の開発に取り組んでいる。その成果は持続的発展社会実現のための基盤技術になるものと期待される。 平成25年度は、新規蛍光体組成探索に加え、これまでに合成されたバナジン酸塩化合物における発光メカニズム解明に取り組んだ。一連のバナジン酸塩化合物では、バナジン酸クラスタ(VO4四面体)が共通して発光中心として働いているにも関わらず、結晶構造や化学組成に応じて発光エネルギーが大きく異なる。また、対カチオンは蛍光には影響を与えていないと考えられるため、その原因はVO4四面体の歪み等の局所構造に存在するものと推測できた。そこで、X線吸収微細構造解析(XAFS)でV周囲の局所構造を調査するとともに、平均構造の観点からX線構造解析を行った。これまでに得られている結果としては、優れた蛍光特性を示す蛍光体では、既往の研究で報告されている結晶構造と比べて対称性が異なることが示唆されており、結晶構造におけるわずかな違いが蛍光特性に大きな影響を与えていることが考えられた。発光メカニズムの解明につながる大きな手がかりを得ることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
バナジン酸塩化合物蛍光体において、平成25年度の研究で結晶構造的特徴と発光特性を関連付ける取り組みを行った。X線吸収微細構造(XAFS)解析を行い、V周囲の局所構造が明らかになるとともに、X線近吸収端構造(XANES)スペクトル測定により発光中心となるVO4クラスタ中のバナジウムの電子状態の相違を初めて明らかにすることができた。それに対し現在は、より詳細に構造的特徴を明らかにするために結晶構造解析に取り組んでおり、当初の研究計画通り順調に推移している。平成25年度中に3件の国際学会発表、1件の国内学会発表、1件の依頼講演において成果発表を行うなど着実に成果を上げている。
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度中の研究で取り組んで結晶構造解析において、既往の研究で報告されている構造との違いが明らかになってきた。すなわち、大まかな構造としては既往の研究で報告されているもので描写できるものの、詳細に見た場合、わずかな構造の変化が発光特性に大きく影響していることがわかってきた。このことはバナジン酸塩化合物蛍光体において特性向上につながる重要な知見であり、更なる構造精密化と結晶構造制御のための合成法の開発がレア・アースフリーによる高輝度蛍光体実現の鍵となることが考えられた。 平成26年度は、平成25年度に引き続き結晶構造の精密化を進める。そこでは、単結晶X線構造解析とともに、単結晶が得られない化合物については粉末X線構造解析を実施し、より高精度の解析を実施することで、バナジン酸塩化合物レア・アースフリー蛍光体の発光メカニズムの本質を明らかにする取り組みを実施する。また、構造が決定した化合物から順次DV-Xα法を利用した分子軌道計算を行い、バナジウム周囲の局所構造と電子状態を明らかにすることで結晶構造と発光特性の相関を定量的に明らかにする。
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次年度の研究費の使用計画 |
研究遂行状況に合わせて適宜消耗品を充当したことや、旅費支給規定に基づいて金額に端数が生じたこと等により次年度使用額に差が生じた。ただしその額は3,034円であり、ほぼ計画通りの予算執行とみなすことができる。 上記差額分については、次年度消耗品費として充当する。
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