研究課題/領域番号 |
24560818
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
黒木 重樹 東京工業大学, 理工学研究科, 准教授 (30293046)
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研究分担者 |
難波江 裕太 東京工業大学, 理工学研究科, 助教 (40514881)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | ヘテロ元素ドープカーボン / 固体NMR |
研究概要 |
炭素骨格に導入するヘテロ元素として,まず窒素を選択した.窒素含有高分子として,ポリアニリンを選択し,その炭素化過程および炭素化後のカーボン骨格中の窒素種の同定を固体NMRを用いて行った. まず,窒素NMR測定のため,15Nラベルアニリンを重合して,15Nラベルポリアニリンを合成した.その試料の熱分解挙動を示差熱ー熱重量同時測定(TG-DTA)で評価した.その後,TG-DTAデータに基づき,15Nラベルポリアニリンの窒素雰囲気下200~1000℃の温度領域での熱処理を行った.それらの試料のCHN比を元素分析により明らかにした.さらに,FTIR測定を行い,熱処理による化学構造の変化を既報(Trchova M. et al. Polym. Degrad. Stab. 2006; 91(1), 114.)と比較した.高温熱処理での炭素化は粉末X線回折(XRD)測定で評価した. それらの試料の固体13Cおよび15NNMRスペクトルを測定した.各々のNMRスペクトルと量子化学計算から得られた理論NMR化学シフトから,熱処理過程における全てのNMRシグナルおよび炭素化後の全てのNMRシグナルの帰属に成功した.その結果,400℃~600℃の温度範囲での熱処理では,高分子主鎖の再配列が起き,アミノ窒素はピロール型および3級窒素に変化し,イミン窒素はピリジン型窒素に変化することがわかった.さらに700℃以上の高温熱処理では,五員環の数が減少し,六員環の数が増加し,炭素化が進行していることがわかった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
すでに,ポリアニリンの熱処理による炭素化過程の詳細を明らかにし,その際の窒素種の同定に成功している.また,他の窒素含有高分子として,ポリピロール,ポリアクリロニトリル,ポリグリシンの合成も完了しているため,今後の研究の進行を加速できる.
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今後の研究の推進方策 |
窒素含有高分子としてポリアニリンに関してはその炭素化過程における化学反応および窒素種の同定に成功したので,今後さらに他の窒素含有高分子,ポリピロール,ポリアクリロニトリルおよびポリグリシンの炭素化過程も同様の手法で着手し,前駆体高分子の構造が炭素化過程にどのような影響を及ぼすかを明らかにする.また,ポリアニリンにおいては微量の鉄種を導入することにより,生成する窒素種および炭素化過程が大きく変化することが知られてる.また,鉄含有窒素ドープカーボンは高分子形燃料電池のカソードにおける酸素還元触媒としても有用であることがわかっているため,鉄含有ポリアニリン炭素化物の構造解析も合わせて行う.
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次年度の研究費の使用計画 |
本年度,円高の影響でラベル試料が若干値下がりし,4700円の余剰金が生じた.次年度より,本年度同様,その余剰金を含め,固体NMR測定のための15Nラベルモノマー,固体NMR測定用試料管を購入する.さらに,鉄含有ポリアニリン炭素化物の鉄ー窒素相互作用を高精度で理論的に解析のため,量子化学計算ソフトおよび計算用ワークステーションも導入する.
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