研究課題/領域番号 |
24560820
|
研究機関 | 電気通信大学 |
研究代表者 |
田中 勝己 電気通信大学, 情報理工学(系)研究科, 教授 (30155121)
|
研究分担者 |
CHOO Cheowkeong 電気通信大学, 国際交流センター, 准教授 (00323882)
|
キーワード | DLC / ラマン分析法 / 炭化水素熱分解 / カーボンナノチューブ / Nドープ / 界面構造 |
研究概要 |
炭化水素を炭素源として電気炉だけで材料表面上にDLC膜を作製する特許(世界で唯一の方法)を有し、最近では800℃以下の温度で金属上にDLC膜堆積に成功した。本方法の優れた特徴に『金属とDLC膜が強固に結合し剥がれ難い』利点がある。本研究の目的は、界面構造の特異性を解明し、界面層の生成解明とその制御方法を探求する事を第1の研究目的(機構解明)とし、また、炭素の原料となる化合物、処理温度と反応条件を変えることでDLCの他カーボンナノチューブ(CNT)、フラーレン類の薄膜合成の可能性の探索を第2の研究目的としている。 平成25年度は、設備購入した切断機と研磨機を用いて、ポリマーでコーティングした金属基板上に堆積させたDLC膜を基板を切断する方法により作成した切断面をSEM,EPMA、ラマンにより解析を行った。ポリマーの伝導性が問題で明瞭な切断面像が得られず、微細部分の解析には至っていない点が問題点として残るが、当初の予測通り炭化水素との反応時間を8時間以上としないと強固な結合に関与する界面構造は生成しないことを確認した。他の機能性炭素化合物の合成に関しては、NドープによりDLCの伝導性を下げ半導体とする方向性にある程度の目途をつけることができた。Si核の植え付けによるsp3炭素の増加を目指す一方、固体NMRを用いてC、Hの特徴づけの研究を遂行している。イオンドープの研究も平成26年度に行う予定としている。 単層、多層を含むCNTの合成とグラフェンの合成も我々の炭化水素熱分解法により可能であることが分かった。この際の再現性、選択性、特に収率についてはまだまだであり、基板表面への反応種の植え付けを平成26年度行う予定である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
第1の目的は、平成24年度に導入したEPMAを用いて、付帯のSEMとの併用により断面解析が可能となってきている。試料断面を固定するポリマーに問題が有り数100nmの解像度での断面構造解析に対する実験結果が不十分であり、この点の改善を急いでいる。強固な結合を可能とする界面構造の生成には8時間以上必要であることは分かった。作製したDLC膜の評価として、ラマン分光法の他、FT-IR、固体NMRにより解析を進めることができ、基礎研究として進展が見込める状況にある。 第2の目的に対しては、単層、多層CNTの他、グラフェン合成が可能であることは見出すことができた。しかし再現性と選択性、収率に問題が有り、平成26年度に基板に触媒を微細加工して原料である炭化水素に検討を加えることにより、単層、多層CNTの他、グラフェン合成への指針を探索する予定である。
|
今後の研究の推進方策 |
試料断面の微細分析に対して、試料断面を固定するポリマーに問題があり、金属粉末を混合するなどの方法により伝導性の問題解決を目指し、EPMA、SEMにて断面分析を行う予定である。また、研究対象とする界面構造が数μm以下であるのに対して、ラマンの分解能が3μm程度(レーザービームの径)であるため界面構造に対するラマン分光法には限界があることが分かった。この解決方法として、DLC薄膜を表面からスパッタして深さ方向の分析をXPSにて行う事としている。NドープDLC作製に関しては、超高真空系内に置いて解離したN原子を供給する方法により、DLC中に出来うる限り多量のN原子を供給する実験を計画しており、系のデザインを行っている段階である。我々の方法で作製するDLCは伝導性が高い。DLCを半導体とするためにsp3炭素を増加させる目的で、Si原子を炭化水素熱分解と同様の設備にて供給する方法をデザインしてDLC作製実験を行う予定である。 CNT,グラフェンの合成に関しては、超高真空系を用いて微細加工した触媒を基板に供給する方法により、炭化水素熱分解法による単層、多層CNT、グラフェン合成に対する再現性と選択性、収率の向上を目指す予定である。
|