研究課題/領域番号 |
24560824
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
村井 俊介 京都大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (20378805)
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キーワード | プラズモニクス / フォトニクス / 発光増強 / ハイブリッド・モード / 蛍光材料 / LED |
研究概要 |
金属表面の自由電子の協同的振動(プラズモン)を利用したフォトニクスの一分野として始まったプラズモニクスは、現在ではフォトニクスの弱点を補い限界を超える技術として注目を集めている。応用分野は通信、情報処理、医療、デバイスとしてはセンサー、ナノ光源から最近では太陽電池など幅広い。光機能の観点でみると、金属と誘電体材料にはそれぞれ以下の長所・短所がある:・金属:表面に励起される表面プラズモンは光と強く相互作用し大きく変調(集中・局在化)させることが可能である一方で、損失が大きい。・誘電体:損失が少なく、導波路など多くの閉じ込め構造が開発されているが、光との相互作用の強さは金属材料に劣る。 本研究は両者を組み合わせ、光と強く相互作用する一方で損失の少ない光機能性複合材料の開発を狙う。特に発光材料と組み合わせることで、発光の増強および発光方向の空間的制御を実現することを狙って研究をすすめる。H25年度の研究では、液相法+スピンコートを用いてシリカガラス基板上に導波路かつ発光層となる蛍光体酸化物(YAG:Ce)薄膜を作製し、その上に銀ナノ粒子を堆積させることでハイブリッド・プラズモニック材料を作製した。また、その試料における反射率測定を行いハイブリッド・モードの分散関係を調べるとともに、YAG:Ceの発光をハイブリッド・モードと結合させることで発光方向の空間的制御と特定の方向・波長における発光増強を達成した。また、ナノインプリント法を用いて2次元プラズモニック結晶を作製することを試みた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
実施計画では、当該年度の研究において、ハイブリッド・プラズモニック材料を作製して、発光の増強を達成することを目的に掲げた。現在までに、銀ナノ粒子と誘電体薄膜から成る構造において発光の増強および方向制御を実験的に確認出来ている。2次元プラズモニック結晶の作製に関しては、ナノインプリント自体は出来るものの、金属の蒸着およびレジストの現像による金属ナノ構造の作製には至っておらず、この点はH26年度の研究課題である。 以上を勘案して、現段階で「研究の目的」の達成度について、「おおむね順調に進展している」と評価した。
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今後の研究の推進方策 |
H26年度の研究においては、1.ハイブリッド・モードによる発光増強と発光方向制御2.2次元プラズモニック結晶による発光制御の2つの課題について研究を行う。 1.に関してはゾルゲル法によってYAG:Ceの発光層を作製し、その上から金属を蒸着し熱処理を施すことで金属ナノ粒子とする。作製したYAG:Ceと金属ナノ粒子の複合構造に対して反射率および発光測定を行う。H26年度は膜厚および金属ナノ粒子の最適を通じ、任意の方向に強力に光を放射する系の実現に取り組む。2.に関しては、まずは金属の蒸着およびレジストの現像による金属ナノ構造の作製を成功させて、金属ナノ構造による発光の増強および発光方向の制御を実現する。最終的には1と2を一体化して、効率の良い発光増強と発光方向制御を実現する。 H26年度の研究においても研究の推進方策にしたがって研究費を使用する。試料作製用の試薬、特にプラズモニック結晶作製のためのモールドの購入に予算を当てる。また、研究成果の報告・情報収集のための学会参加費用にも研究費を使用する。さらに、研究成果の論文化にともなう投稿料も研究費から支出する。
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次年度の研究費の使用計画 |
研究に必要な消耗品、旅費、その他の費用を支出したあと、中途半端な金額が残ったため次年度繰越を選択した。 次年度の消耗品購入費用に充てる予定である。
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