研究課題/領域番号 |
24560826
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
荒木 秀樹 大阪大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (20202749)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 強誘電性 / ペロブスカイト構造 / 原子空孔 |
研究概要 |
【研究の目的】ペロブスカイト型構造を有するPbTiO3は、優れた誘電、焦電、圧電特性を示し、赤外線センサーや圧電アクチュエータ、不揮発性メモリなど様々な電子デバイスへの応用に関心が集まっている。PbTiO3の誘電特性は、点欠陥を導入すると、分域の移動が変化するなどして、大きく変化すると報告されており、PbTiO3では、点欠陥がその物性を決定する重要な因子の一つとなっていると容易に推測される。しかし、Pb/Ti比が化学量論組成である1からずれたPb1+XTi1-XO3に構造欠陥として導入されるカチオン空孔の形成挙動については、系統的な研究が少なく不明な点が多い。そこで、本年は、Pb1+XTi1-XO3の陽電子寿命を測定し、構造欠陥として導入されるカチオン空孔の形成挙動について、まずは、明らかにした。 【実験方法】PbO粉、TiO2粉を秤量し、乳鉢内で混合し、1323K、5時間空気中で焼結した。得られた焼結体の陽電子寿命測定は、30μCiの22Na線源を用いて、fast-fast timing coincidence systemにより室温で行った。 【結果と考察】TiリッチPbTiO3、PbリッチPbTiO3の試料のいずれにおいても、陽電子平均寿命は200 psを超える長い値となった。理論計算によるPbTiO3バルクの陽電子寿命値や酸素空孔中の陽電子寿命値より、40ps以上大きな値であり、どちらの試料にもカチオン空孔が形成されていることは明らかである。陽電子寿命スペクトルの多成分解析の結果、どちらの試料にも、Pb空孔とTi空孔で消滅する陽電子の成分が認められ、TiリッチPbTiO3試料の方がPbリッチPbTiO3試料よりPb空孔で消滅する成分の強度が高く、より多くのPb空孔が導入されていることが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
平成24年度は、ペロブスカイト型強誘電体PbTiO3について研究を行うと研究実施計画に記した通りに実行した。あらかじめ行った予備実験の知見から、研究実施計画に記載した「高純度のPbO粉、TiO2粉を秤量し、部分安定化ジルコニア製の乳鉢内でエタノールを加えて混合し、1323K、5時間空気中で焼結を行う。」の方法に従って、所望の焼結体を得た。こうして得られた焼結体のX線回折測定を行い、試料中にはペロブスカイト構造を有する相のみが存在することを、研究実施計画通りに、明らかにし、陽電子寿命測定を行うことができた。さらに、研究実施計画に記載した通り、Pb空孔(Aサイト空孔)、Ti空孔(Bサイト空孔)濃度が、Pb/Ti比を変化させると、どのように変化するのかを、当初の計画以上に、詳細に明らかにすることができたため。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、ペロブスカイト型強誘電体PbTiO3にAサイトを占有すると言われているLaをドープした際の空孔形成について研究を行う。高純度のPbO粉、TiO2粉、La2O3粉を秤量し、部分安定化ジルコニア製の乳鉢内でエタノールを加えて混合し、1323K、5時間空気中で焼結を行う。こうして得られた焼結体のX線回折測定を行い、試料中に存在する結晶相の同定を行う。陽電子寿命測定は、30μCiの22Na線源を用い、fast-fast timing coincidence systemにより室温で行う。Laドープ量を変化させた試料を作製して、陽電子寿命測定を行い、Pb空孔(Aサイト空孔)、Ti空孔(Bサイト空孔)濃度がどのように変化するのか、を明らかにする予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
主に、試料作製および陽電子寿命測定とその校正のために必要な消耗品に使用する予定である。また、関連する研究分野の最新の研究成果情報の収集のために、学会や研究会への旅費にも充てる予定である。
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