研究実績の概要 |
【研究の目的】PbTiO3は、優れた強誘電体であり、反強誘電体PbZrO3との固溶体Pb(Zr, Ti)O3として、不揮発性メモリー、アクチュエータ、センサなどに応用され、今後もMEMS分野の様々なデバイスへの応用が期待されている。Pb(Zr, Ti)O3にNb5+を添加すると、圧電定数は増加し、機械的品質係数は小さくなることが報告されている。この原因は、Nb5+がBサイト(Ti4+サイト)を占め、電気的中性条件を満たす為に、Aサイト(Pb2+サイト)に空孔が形成されるためではないかと推定されているが、Bサイト(Ti4+サイト)にも空孔が形成されているとの報告もあり、空孔形成挙動について不明な点が多い。そこで、本研究では、Nbを添加したPbTiO3の陽電子寿命測定を行い、カチオン空孔の形成サイトについて明らかにした。 【実験方法】PbO粉、TiO2粉、Nb2O5粉を秤量し、乳鉢内で混合し、1323Kで5時間、空気中で焼結した。得られた焼結体の陽電子寿命測定は、22Na線源を用いて、fast-fast timing coincidence systemにより室温で行った。 【結果と考察】作製したNb添加PbTiO3試料から得られた陽電子寿命スペクトルには、Aサイト空孔で消滅したと考えられる300ps近い長い陽電子寿命の成分だけでなく、それより短いおよそ200ps程度の陽電子寿命成分も観測された。これは、Bサイト空孔で消滅した陽電子の寿命成分であると考えられ、Aサイトだけでなく、Bサイトにも空孔が形成されていることが明らかになった。
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