研究概要 |
これまで報告者らは、希土類固溶セリアの電子伝導性およびイオン輸率の酸素分圧依存性を検討してきた。電子伝導は水素が固溶して促進されることを示唆した。本研究ではガドリニウム固溶セリア(Gd-doped ceria, GDC)電解質の電子伝導性を抑制するため、次のことを検討する。 1)Gdの固溶量によりGDCへの水素の固溶を抑制する。2)アノードにプロトン導電体を添加し、GDCへの水素の固溶を抑制する。3)カソードでの空気の拡散を促進する気孔構造を作り、イオン輸率を増加させる。これらの結果より、GDCのイオン輸率を向上させ燃料電池の性能を改善することを目的とする。 初年度は、上記1)について検討した。ガドリニウム固溶量の異なるGDC(Ce1-xGdxO2-x/2、x=0.05, 0.10, 0.15, 0.20)を用いて電解質を作製し、アノードにNiO-GDC,カソードにLa-Sr-Co-Fe-O系ぺロブスカイト酸化物を用いて固体酸化物形燃料電池(SOFC)を作製した。アノードに燃料として、3vol%-H2Oを含むH2を供給し、SOFCの開放起電力および出力密度を500-800℃の範囲で測定した。 格子定数はガドリニウム固溶量の増加と共に増加し、ガドリニウム固溶量と共に酸素空孔量が増加することを示した。x=0.1の時、開放起電力と最大出力密度とともに、最大値(0.829 V, 166 mW/cm2 at 600℃、0.787V, 506 mW/cm2 at 800℃)を示した。x=0.1から0.2で生成した過剰な酸素空孔は、酸化物イオン電導度の増加には寄与せず、燃料の水素と反応して電子を生成し、発電性能を低下させることが明らかとなった。
|