研究課題/領域番号 |
24560829
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研究機関 | 東京都市大学 |
研究代表者 |
江場 宏美 東京都市大学, 工学部, 准教授 (90354175)
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キーワード | X線回折 / 共焦点 / 結晶構造 / 不均一試料 / マッピング / 結晶相分布 |
研究概要 |
材料科学の分野のいろいろな場面において取り扱われるいわゆる実試料は,不均一な混合物であることがほとんどであり,そのような試料内の特定の位置における結晶相の同定と,試料内での結晶相の分布の分析を可能とする新しいX線回折技術を開発することを目的とし,共焦点型X線回折装置の構築を進めている。昨年度(平成24年度)はブラッグブレンターノ型の汎用型粉末X線回折装置の回折計を改造して,基本的な装置原理の確認を行ったが,本年度は共焦点型測定に最適な回折装置を構築するため基本的な部品の調達から行った。X線源としては銅よりも波長が短く透過能の高いモリブデン管球を導入し,深い位置の情報も得られるように工夫した。50W空冷型管球からの特性X線をポリキャピラリ集光素子を用いて約100μmに集光し,もう一方のポリキャピラリの焦点をここに一致させて共焦点を回転中心とする2θアーム上に設置し回折X線をシンチレーションカウンター検出器に導く配置とした。ここで2θアームは回転ステージ上におき,その回転中心が共焦点に一致するよう光軸合わせとその検証を実施した。 つづいて複数の結晶相から構成される模擬試料を用意し,これをX-Y-Zの試料ステージ上にセットして共焦点における結晶相からの回折X線を2θスキャンにより測定し,試料スキャンと組み合わせることで試料内の結晶相の3次元的な分布を取得した。シート状試料の厚み測定,積層試料の各層を構成する結晶相の識別と厚さの測定,3次元的結晶相内包試料の分布測定などにより分解能,感度等の評価を進め,回折パターンの角度分解能および結晶相分布の空間分解能の評価を進めた。 さらに2θ走査と試料マッピングのためのX-Y-Z走査用のステージをパソコンで制御し,また検出器からのシグナルも同時にパソコンに取り込みデータ収集までできるようにするため,通信プロトコル、コマンドの確認やソフトウェアの作成に着手した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
回折装置を組み上げ,共焦点型の光学系をセットアップして,X線回折測定を実施できた。タイプの異なる試料を用意してそれぞれマッピング測定を行ってデータを取得し,共焦点型X線回折装置・手法としての評価,改善点の確認を行うことができた。そしてX線集光条件や回折測定条件の改良指針を得ることができた。また装置としての使用性向上のためステージの制御とデータ収集をパソコンで実施するためのソフトウェアの作成も進めることができた。
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今後の研究の推進方策 |
構築中の回折計の光軸調整精度をさらに向上させ,すなわち,2つの集光素子の焦点および回転ステージの回転中心の一致精度を高めていくとともに,測定の最適化を進めて,試料への入射角や2θ測定範囲の調整による分解能や測定深度の改善を進めていく。さらに測定用ソフトウェアを構築し,そしてさまざまな無機材料の測定に着手し,分析法としての評価を進めていく。くわえて,2次元検出器を導入して、広範囲の2θにおける回折線(回折パターン)を取得し、角度走査機構の省略と測定時間の短縮化を試みることや,エネルギー分解能のある半導体検出器を取り付け,結晶構造と同時に蛍光X線による組成情報の3次元的取得を進めていく。
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次年度の研究費の使用計画 |
学会出張のための旅費を他の予算でまかなうことができたこと,また他に予定していた出張に校務のため行くことができなかったことによる。 次年度の助成金と合わせて,物品費の一部として使用する計画である。具体的には,光軸調整に使用する治具等の小物製作部品や,測定試料用の素材,試薬等の調達を予定している。
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