共焦点型X線回折(XRD)法の実験室系装置の構築は代表者の知る限り国内外で初めてである。X線光源と検出器それぞれにポリキャピラリ集光素子をとりつけて共焦点型配置とし、検出器を2θ角度走査することでXRDパターンを取得した。入射X線と検出器側の微小な焦点を一致させるための調整機構や、2θ回転機構をこの共焦点上に一致させるための調整機構を構築し、光学系の微調整を繰り返して共焦点配置での3次元XRDマッピングデータの取得が可能となり、3次元的試料の測定を試みることができた。 特に回折X線は蛍光X線とは異なり指向性があるため、正確な角度調整と、また共焦点を維持したままの角度スキャンの必要があることから、光学系の構築と調整に試行錯誤と工夫が必要であった。さらに角度発散の大きい集光素子の使用による角度分解能の低下のため類似の回折角をもつ物質の判別は難しくなるが、従来型のXRDを併用して同定することで解決した。さらにX線光源をCu管球から波長の短いMo管球に変更することでX線の減衰を抑え,深い位置からの信号も得られるようになった。 一例として,炭素材料内に金属アルミ(幅1mm、厚さ0.1mm)の内包物を有する模擬試料について、垂直断面の2次元マッピングを行い、アルミの含まれる深さとサイズに対応する像を取得することができた。また2つの焦点を互いに少しずらすことで、設計上の共焦点サイズよりも高い分解能が得られることを確認した。 多成分・多相から構成されるあらゆる材料について、共焦点XRDによりその結晶相分布など構成・組織を知ることができ、材料の評価、性質や機能の解明に役立たせることができると考えられる。鉄鋼など金属試料はX線の吸収が大きく深部の観察は難しいが、輝度の高い強力光源の利用、集光光学系の改良などにより、原理的には克服していける課題である。今後のさらなる装置としての改良により,用途拡大と発展が期待できる。
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