研究課題/領域番号 |
24560830
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研究機関 | 東京工芸大学 |
研究代表者 |
松本 里香 東京工芸大学, 工学部, 准教授 (30338248)
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キーワード | 黒鉛層間化合物 / 大気安定性 / ゼーベック係数 / MgC6 / KC8 |
研究概要 |
H25年度の実施計画は[1]77K~室温における物性測定、[2]4K~室温における電気伝導率・ゼーベック係数測定、[3]c軸方向の電気抵抗等測定の準備であった。しかし、4Kを実現する極低温測定装置の温度制御が不安定なため、[2]および[3]の本格実施を見送り、H26~27年度で実施予定であった「新規超伝導GIC創製」の主要部分である[4]Mg-GICの合成を先行した。 [1]に関しては、数種類の黒鉛をホストとしたK-GIC、Li-GIC、CuCl2-GIC等の従来型GICを用いてデータを取得した。当初計画では、これらは単にCa-GICと比較する基準データと位置付けていたが、ホスト黒鉛やインターカレート物質によるGICの大気安定性の違いを明らかにし、分解メカニズム解明のヒントを得ることができた。その分、Ca-GICの測定に遅れが生じているが、今後、Ca-GICのデータ取得および解析に着手する。 [4] に関しては、H24に気相法を用いて検討した結果、生成物のゼーベック係数測定によりMg-GIC形成の徴候が見られている。よって、H25年度は気相法とメカノケミカル法を用いた合成検討を行なった。H24年度の気相法は真空加熱であったが、H25はAr封入により加圧状態で加熱する方法を採用した。その結果、H24年度と同様に、気相法においてMg-GIC形成の徴候が確認された。大気下におけるXRD構造解析ではMg-GIC形成は証明できなかったが、Ar下におけるゼーベック係数測定において、K-GIC等と同等の-30μV/K程度の値を示す試料も存在した。よって、Mg-GICが試料表層のみに形成した可能性もあるため、今後、最適条件の探索等が必要となる。メカノケミカル法においては、様々な条件を検討したが、Mg-GIC形成の明らかな徴候を得ることはできなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の主要部分である極低温物性測定に用いる装置の温度制御が良好でないため、極低温測定の実験が実施できていない。H25年度は温度制御を安定させるための改良を行ない、H26年度は測定が可能となる見込みである。そのため、予定を変更し、研究期間の後半で実施予定だった新規超伝導GICの創製のテーマを先行して行なった。計画の順番は逆転しているが、概ね順調と判断できる。
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今後の研究の推進方策 |
4K~室温を実現する極低温制御装置の改良が進展しているため、H26年度夏ごろからは測定が可能となる見込みである。よって、ホスト黒鉛やK-GIC等の従来型GIC、Ca-GIC、Ca-Li-GICの4K~室温の電気抵抗測定を行ない、Ca系GICの超伝導性を確認する。その後、試料ホルダーを改良し、ゼーベック係数を測定可能とする。77K~室温の物性測定に関しては、従来型GICに関する基準データが準備できたので、順次、Ca-GICおよびCa-Li-GIの測定に着手する。
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次年度の研究費の使用計画 |
数千円単位の消耗品購入予算において、実験遂行に早急に必要でない物品の購入を見送った。 H26年度は測定系の実験が増えるため、小額の消耗品が必要となる。実験遂行に際し、必要に応じて使用する。
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