研究課題/領域番号 |
24560830
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研究機関 | 東京工芸大学 |
研究代表者 |
松本 里香 東京工芸大学, 工学部, 准教授 (30338248)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 電気伝導率 / ホール係数 / 磁気抵抗 / 超伝導性 / 大気安定性 |
研究実績の概要 |
本研究では、従来型の黒鉛層間化合物(GIC)と異なり、比較的高い温度11.5Kで超伝導転移を示すカルシウム黒鉛層間化合物(CaC6)の熱・電気特性を中心に調べることを目的としている。CaC6はアルカリ金属-GICと同様に電子伝導であることが期待されるが、事前研究において、CaC6が常温で正のゼーベック係数を取りうること、つまりホール伝導である可能性を確認していた。よって、26年度はCaC6の常伝導機構を調べることを目的とし、ホール係数および磁気抵抗測定を行い、キャリア密度や移動度の算出を試みた。 CaC6の電気伝導率はホスト黒鉛の約10倍であり、従来型のGICと同様またはやや低い値であり、さらに大気安定性も低かった。しかし、磁気抵抗は測定されず、さらに、ホール係数は従来型GICよりもはるかに小さく、測定の度に正や負に不規則に偏った。磁気抵抗が観測されないということは、電子またはホールのみによる1キャリアの伝導である。しかし、ホール係数の符号が度々変化するため、キャリアの種類を特定することができていない。この現象は、従来型のGICとは全く異なるものであり、現在、解釈を行っている最中である。 CaC6との比較用として、代表的な従来型GICである金属塩化物-GICの伝導機構を調べるために、同様の測定を行った。金属塩化物-GICは電気伝導性が比較的高いが、現在まで、超伝導性を示すものは報告されていない。本研究の結果、CaC6またはアルカリ金属-GICと異なり、キャリア密度が低めである傾向が確認された。 さらに、本研究のような大気下における物性測定に際しては、GICの大気下安定性が問題となる。より正確な測定を行うためには安定性の高いGICを用いるべきである。よって、代表的なカリウム-GICを用いて、安定なGICの生成機構を解明した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初計画していた各種GICの極低温における電気伝導率測定は遅れている。その代わりに、各種GICの電気伝導機構、および、大気下安定化機構とホスト黒鉛結晶構造の関係の解明を試み、一定の成果を得たので、上記の達成度評価とした。 極低温の電気伝導率測定が遅れている理由は、装置の故障である。極低温クライオスタット内における電気伝導率測定機構の改良中に、誤って配線ケーブルを断線させてしまい、修理のために装置をメーカに長期間預ける必要が生じた。その結果、予定していた装置の改良や測定が遅れてしまった。
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今後の研究の推進方策 |
当初予定と順番が逆になってしまったが、最終年度である27年度に極低温の電気伝導率測定および温度依存測定を順次行う予定である。測定装置の改良を急ぎ、順次、CaC6および比較用のアルカリ金属GICや金属塩化物GICの測定を行い、その違いを明らかとする。さらに、ホストの異なるCaC6を合成、測定を行い、事前研究の段階で存在が示唆されていたCaC6の超伝導性におけるホスト依存性を確認する。 また、24-25年度に行った新規超伝導GICとして期待されるMg-GICの合成も引き続き検討する。これまでにMg-GIC形成の構造的な証拠は得られていないが、ゼーベック係数にGIC形成を示唆する変化が現れることが確認されている。よって、その変化が現れた合成条件の再実験を丁寧に行い、その確度を上げ、Mg-GIC合成の手がかりをつかむことを目標とする。
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次年度使用額が生じた理由 |
参加した国外学会Carbon2014が韓国の開催だったため、旅費が安価であった。
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次年度使用額の使用計画 |
今年度参加する国外会議Carbon2015はドイツでの開催のため旅費がかかる。よって、ここに充填する。
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