研究課題
本研究は、比較的最近知られるようになったカルシウム黒鉛層間化合物(Ca-GIC;組成CaC6)の解析を行い、従来から知られるK-GIC等との相違点を明らかにすることで、GICの新たな展開を狙うものである。Ca-GICは11.5Kという従来型よりも10K以上高い超伝導転移温度をもつことで注目を集めたが、我々は、その他にも、ゼーベック係数が小さい特徴をもつことを既に明らかにしている。本年度は大気安定性の面でもCa-GICが従来型GICと異なることを、X線回折やラマン分光測定による構造変化の他、電気伝導率、ホール係数、磁気抵抗等の物性測定から明らかにした。試料表面の色変化や構造解析からは、Ca-GICは従来型よりも安定性が高いと判断できるが、物性測定からは不安定で、大気接触直後に分解すること、さらに、分解挙動がK-GIC等とは異なることが明らかとなった。ポリイミドフィルムの熱分解黒鉛シートを用いて合成したCa-GICの超伝導性を確認した。その結果、超伝導転移を生じるのは7~8Kであり、報告されている11.5Kよりも低かった。これは、Ca-GICをLi-Ca溶融合金と黒鉛を反応させて合成しているため、試料組成が純粋なCaC6ではなく、Liが残存している影響であると考えられる。また、複数の試料を測定すると、超伝導転移の認められない試料もあった。転移温度のさらなる上昇が見込まれるMg-GICの創製も試みた。これまでにMg-GIC形成の兆候が確認された反応条件により、上記の黒鉛シートを用いて反応を行ったところ、今年度は兆候を得ることはできなかった。以上のように、Ca-GICが従来型GICとは異なる新型GICであることは明らかになったが、その詳細を完全に理解するまでは至っていない。引き続き、Ca-GICの理解およびMg-GICの創製の検討を続ける予定である。
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Synthetic Metals
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