研究課題/領域番号 |
24560832
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 独立行政法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
北村 直之 独立行政法人産業技術総合研究所, ユビキタスエネルギー研究部門, 主任研究員 (10356884)
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研究分担者 |
福味 幸平 独立行政法人産業技術総合研究所, ユビキタスエネルギー研究部門, 主任研究員 (80357897)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | ビスマス / ナノ粒子 / 磁場配向 |
研究概要 |
1.ポリオール法による板状ビスマスナノ粒子の合成 エチレングリコール中に溶解された塩化ビスマスを加熱還元することで金属ビスマスナノ粒子を合成し、水酸化ナトリウム、ポリビニルピロリドンおよび助剤としての塩化鉄の影響を調べた。助剤を添加しない合成では板状粒子の生成は数%以下であり、サブミクロン以下の球状粒子が生成した。ポリビニルピロリドンの添加により粒子径は減少し、200-400nmの平均粒径の範囲で変化することが分かった。反応式量の2倍以下の水酸化ナトリウムの添加では粒径分布が大きくなり安定した粒子の形成ができないことが分かった。微量の助剤の添加により60%以上の数量比で約800nm厚さ50nmの板状粒子が生成された。板状粒子のサイズにはポリビニルピロリドンの添加量の影響は顕著ではなかった。水酸化ナトリウムの減少とともに板状粒子のサイズが大きくなる傾向が見られ、500-2000nmの範囲で変化した。助剤の増加によりロッド状粒子の生成比率が増加することが確認された。このように粒子形状とサイズへの添加材の影響について明らかにすることができた。生成した粒子はX線回折により三方晶の単結晶であることを確認した。 2.磁気配向現象を用いた磁気的性質の解析 ビスマス結晶の異方性誘電率から現れる偏光透過率の差異を利用して、磁場中での粒子の配向変化を観察することを試みた。本年度はこのナノ粒子の配向状態を観察できる磁場中偏光評価装置を設計試作した。本装置では直流信号での観測システムを採用したため、対流や磁場中でのシステムの不安定のために正確な配向状態の磁場依存性が得られなかった。そこで、強磁場下でのX線回折スペクトルのその場観察から磁気的性質を調べた。板状粒子においても磁場とともに(110)ピークの増加が観測された。強度変化の磁場依存性から球状粒子と同じオーダーの異方性磁化率を持つことが分かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ナノ粒子作製では多くの合成実験を実施し、いままで不明であった、粒子形状や粒子サイズへの水酸化ナトリウム、ポリビニルピロリドン、助剤の塩化鉄の影響を初めて明らかにした。ポリビニルピロリドンはビスマス原子の凝集を抑制するが形状への影響が小さく、塩化鉄が平板性形状の形成に影響することが明らかになったことは、学術的にも興味深い結果である。 磁気的性質の解析にでは配向状態を光学的に評価する装置を設計試作した。配向状態の正確な評価には改造が必要であるが、本年度はX線回折による静的な配向挙動の観察を行った。今回調べた形状の板状粒子では、ほぼ同質量の球状粒子に近い異方性磁化率を有することが分かった。正確な形状やサイズの依存性解明には、種々の粒子の合成と次年度以降に予定している粒子をポリマー中に配向固定化した試料の光学的評価やシミュレーションの結果から相互的に解析を進めていく必要があるが、本年度の成果はその達成のために十分な結果を与えるものであり、順調に進展していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
本年度で明らかにした粒子形状とサイズに対する影響のメカニズムを明らかにするとともに、その磁気的性質・電気的性質の物性解析を行うために、種々のサイズと形状の粒子を合成する。 磁気的性質の解明には、本年度設計した偏光を利用した配向観察装置の改造を行い、粒子配向の動的挙動観察も行う。X線回折を併用することでより正確な粒子形状とサイズ依存性を明らかにする。また、PMMAなどの透明物体に配向固定化を行うことで分光学的手法が用いることができ、種々の誘電的性質を調べる。 最終年度に向けては、分光学的に得られた誘電的性質をRCWAやFDTDなどの電磁波解析シミュレーションを利用し解析し、形状やサイズの明らかにして行く方針である。
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次年度の研究費の使用計画 |
年度後半で磁場発生装置の定期メンテナンスを迎えるため定期検査を行うために支出する(約80万円)。本年度課題が残された偏光評価装置の改造のための消耗品と試薬・器具類を購入する(約30万円)。本年度および次年度の成果発表のための旅費・投稿料等として残りの予算の支出を予定している。
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