研究課題/領域番号 |
24560832
|
研究機関 | 独立行政法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
北村 直之 独立行政法人産業技術総合研究所, ユビキタスエネルギー研究部門, 上級主任研究員 (10356884)
|
研究分担者 |
福味 幸平 独立行政法人産業技術総合研究所, ユビキタスエネルギー研究部門, 主任研究員 (80357897)
|
キーワード | ビスマス / ナノ粒子 / ナノプレート / 異方性磁化率 / 偏光特性 |
研究概要 |
1.磁気配向現象を用いた磁気的性質の解析 ビスマス結晶の異方性誘電率から現れる偏光透過率の差異を利用して、板状および球状ナノ粒子の配向状態を観察する磁場中偏光評価装置の改良を行った。電源ならびに測定系全体の安定性を向上させることで、数時間オーダーの信号安定性を確保することができた。直径約400nmおよび球直径約200nmの球状ナノ粒子を適度な緩和時間が得られる粘度のシリコンオイル中に分散させ、磁場中配向の時間変化を観察した。その結果、数~数百secの広いダイナミックレンジで緩和時間τを観察できることが分かった。緩和時間は磁場強度とともに短くなり、緩和時間の時間依存性から、400nmの粒子で3.6x10-5、200nmの粒子で3.2x10-5の異方性磁化率値を得ることができた。このうち、400nmの粒子の結果は過去の磁場中でのXRD実験によって得られた結果と合致した。板状ナノ粒子の実験では、形状効果が異方性誘電率よりも大きくなることから、逆の偏光特性が現れることが分かった。球状粒子と同オーダーの緩和時間とそれよりも1~2桁大きい緩和時間の二つの配向挙動が新たに観察された。 2.ビスマスナノプレートの配向挙動と光学特性 800-900nmサイズ(厚さ約50nm)のナノプレートを磁場中においてMMA中に分散させ、これを重合することによってナノプレートが配向したPMMAを作製した。X線回折を用いてナノプレートの配向状態を調べた結果、同質量の球状粒子よりも低磁場から配向が進展し、より大きな磁気異方性を有する可能性が示唆された。球状粒子が固定されたPMMAでRCWA解析を行った結果、バルクビスマスの異方性光学定数の文献では大きな偏光依存性を説明できなかった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
磁場中におけるナノ粒子の配向挙動を光学的に観察する測定装置を構築した。数時間にわたり信号の安定性を示すことから、ナノ粒子のように磁気トルクが小さいために数百秒の長い緩和時間がかかる場合においても再現性よく解析できる事を示した。さらに、配向時の光学的異方性と形状効果による光学異方性が逆転するビスマス球状粒子と板状粒子の場合、合成時において両者が混在していても、本手法であれば分離して測定できることも示した。これらのことは、本研究の目的が達成できる一つの手法として新たに提示するばかりでなく、当該分野の発展にも役立つと考えられる。粒子径により異方性磁化率値が変化する傾向が実験からみられたことや板状粒子では2種類の配向緩和挙動があることが見出されたことは大変興味深く、粒子形状やサイズの影響を理解する上で重要な結果を得たといえる。今後理論シミュレーションを加えた現象の理解と解析を進めために着実に研究が進んでいるといえる。
|
今後の研究の推進方策 |
本年度に明らかにした球状粒子および板状粒子の磁場中配向挙動のデータを元にして、ビスマスナノ粒子の異方性磁化率の解析を行う。概ね確立したナノ粒子の合成方法を用いて、種々のサイズの板状および球状粒子を作製し、磁気異方性のサイズおよび形状効果を明らかにする。さらに、板状および球状粒子の分散配向したPMMAの偏光光学特性を実験的に測定し、その形状およびサイズ効果を明らかにする。これとともに、計算シミュレーションによる光学特性解析を行い、光学定数、すなわち誘電率の異方性を解析し、それらに対する粒子サイズや形状の効果について明らかにする。
|
次年度の研究費の使用計画 |
磁場発生装置(超伝導磁石)の定期メンテナンスを当該年度行う予定であったが、使用時間がメンテナンスの期間に達しなかったため、次年度に繰り越してメンテナンスを実施する 磁場発生装置の定期メンテナンス時期迎えるため定期検査の実施する(約80万円)。偏光評価装置の測定精度を向上するための測定装置および器具類を購入する(50万円)。本年度および次年度の研究成果発表のため、学会旅費および投稿料として残りの予算を支出を予定している。
|