第一原理計算と実験の連携による強誘電体相転移における化学結合とソフトモードの研究

2014 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 24560833
• 研究機関: 一般財団法人ファインセラミックスセンター
• 研究代表者: 森分 博紀 一般財団法人ファインセラミックスセンター, その他部局等, その他 (40450853)
• 研究期間 (年度): 2012-04-01 – 2015-03-31
• キーワード: 強誘電体材料 / 第一原理計算 / 化学結合状態 / ソフトモードフォノン

研究実績の概要

本課題は，強誘電体材料の巨大強誘電物性機能について，その原子レベルでの構造解析と機能発現メカニズムを解明することを目的とし，化学結合状態とソフトモードフォノン巨大強誘電体物性に着目して，高精度の第一原理計算と実験を組み合わせた包括的な研究を実施し，巨大な強誘電物性発現のメカニズムを解析，解明することを目的として研究活動を実施した．
その結果，大規模分子動力学シミュレーションソフトウエアの開発を行い，古典分子動力学法に基づきシャルモデルを応用したポテンシャル開発を行った．BaTiO3をモデル材料として，その精度の検証を実施したところ，BaTiO3の温度による逐次相転移はほぼ再現できることが判明した．これを用いて有限温度での誘電率のシミュレーションを行ったところ，その温度依存性の傾向を良く再現することが分かった．これらの結果は，BaTiO3の巨大誘電率はポテンシャル障壁が熱振動エネルギーと同程度であるソフトモードの存在により発現していることを示しており，新規巨大誘電率材料の設計にはこのポテンシャル障壁が熱振動エネルギーと同程度であるソフトモードを物質内に作りこめば良いことを示唆している．（本シミュレーションによる誘電率絶対値は実験値を大幅に過小評価する課題があり，この点については継続検討する必要がある．）また，新しい強誘電材料の候補として従来の酸素八面体とはことなる四面体ユニットを有する物質の検討を行い，従来強誘電体にはならないと考えられていたZnOなどのウルツ鉱型結晶構造においてP63mc → P63/mmc → P63mcでの分極反転機構により強誘電性を発現する可能性を明らかにした．また，これらの物質群は酸素をカルコゲンに置換しても同様のメカニズムにより強誘電材料となりうることが判明し，新規強誘電体材料開発に新たな設計指針を提供した．

研究成果

• [雑誌論文] Dielectric properties of BaTiO3 by molecular dynamics simulations using a shell model (2015)
  • 著者名/発表者名: Tamotsu Hashimoto, Hiroki Moriwake
  • 雑誌名: Molecular Simulation 巻: - ページ: -
  • DOI: 10.1080/08927022.2014.938067
  • 査読あり / 謝辞記載あり
• [雑誌論文] Photo-induced change of dielectric response in BaCoSiO4 stuffed tridymite (2014)
  • 著者名/発表者名: Hiroki Taniguchi, Hiroki Moriwake, Akihide Kuwabara, Takuma Okamura, Takafumi Yamamoto, Ryuji Okazaki, Mitsuru Itoh, and Ichiro Terasaki
  • 雑誌名: Journal of Applied Physics 巻: 115 ページ: 164103
  • DOI: http://dx.doi.org/10.1063/1.4872032
  • 査読あり / 謝辞記載あり
• [雑誌論文] Ferroelectricity in Wurtzite Structure Simple Chalcogenide (2014)
  • 著者名/発表者名: Hiroki Moriwake, Ayako Konishi, Takafumi Ogawa, Koji Fujimura, Craig A. J. Fisher, Akihide Kuwabara, Takao Shimizu, Shintaro Yasui, Mitsuru Itoh
  • 雑誌名: Appl. Phys. Lett. 巻: 104 ページ: 242909
  • DOI: 10.1063/1.4884596
  • 査読あり / 謝辞記載あり
• [雑誌論文] Multi layer ceramic capacitors materials research using first-principles calculations (2014)
  • 著者名/発表者名: Hiroki MORIWAKE
  • 雑誌名: J. Ceram. Soc. Jpn. 巻: 122 ページ: 367-372
  • DOI: 10.2109/jcersj2.122.367
  • 査読あり / 謝辞記載あり
• [学会発表] 分子性強誘電体トリクロロアセトアミドの相転移挙動の第一原理計算 (2015)
  • 著者名/発表者名: 森分 博紀・小西綾子，小川貴史，Craig A. J. Fisher，桑原彰秀，大谷紀子，森吉千佳子，黒岩 芳弘
  • 学会等名: 物理学会第70回年次大会（2015年）
  • 発表場所: 早稲田大学
  • 年月日: 2015-03-21 – 2015-03-24
• [学会発表] AgNbO3の電場誘起強誘電相転移に関する第一原理計算 (2015)
  • 著者名/発表者名: 森分博紀，小西綾子，小川貴史，クレイグ フィッシャー，桑原彰秀，符 徳勝
  • 学会等名: 日本セラミックス協会
  • 発表場所: 岡山大学
  • 年月日: 2015-03-18 – 2015-03-20
• [学会発表] Piezoelectric constants of KNbO3 by molecular dynamics simulations using a shell model (2015)
  • 著者名/発表者名: Tamotsu Hashimoto, Hiroki Moriwake
  • 学会等名: Fundamental Physics of Ferroelectrics and Related Materials 2015
  • 発表場所: ノックスビル（米国）
  • 年月日: 2015-01-25 – 2015-01-28
• [学会発表] First-Principles Calculation of Ferroelectric Phase Transition of Pure Molecular Crystal Trichloroacetamide (2015)
  • 著者名/発表者名: 森分 博紀・小西綾子，小川貴史，Craig A. J. Fisher，桑原彰秀，大谷紀子，森吉千佳子，黒岩 芳弘
  • 学会等名: Fundamental Physics of Ferroelectrics and Related Materials 2015
  • 発表場所: ノックスビル（米国）
  • 年月日: 2015-01-25 – 2015-01-28
• [学会発表] First-principles Calculations of Ferroelectricity in Wurtzite Structured Simple Chalcogenides (2014)
  • 著者名/発表者名: Hiroki Moriwake, Ayako Konishi, Takafumi Ogawa, Koji Fujimura, Craig A. J. Fisher, Akihide Kuwabara, Takao Shimizu, Shintaro Yasui, Mitsuru Itoh
  • 学会等名: 12th Russia/CIS/Baltic/Japan Symposium on Ferroelectricity
  • 発表場所: リガ（ラトビア）
  • 年月日: 2014-09-29 – 2014-10-02
• [学会発表] 分子性強誘電体トリクロロアセトアミドの相転移挙動の第一原理計算 (2014)
  • 著者名/発表者名: 小西綾子，森分 博紀，小川貴史，Craig A. J. Fisher，桑原彰秀，大谷紀子，森吉千佳子，黒岩 芳弘
  • 学会等名: 日本セラミックス協会
  • 発表場所: 鹿児島大学
  • 年月日: 2014-09-09 – 2014-09-11
• [学会発表] First-Principles Calculations of Ferroelectricity in Wurtzite-Structured Simple Chalcogenides (2014)
  • 著者名/発表者名: 小西 綾子・森分 博紀・小川 貴史・藤村 幸司・Fisher Craig A. J.・桑原 彰秀・清水 荘雄・安井 伸太郎・伊藤 満
  • 学会等名: the 10th Japan-Korea Conference on Ferroelectrics
  • 発表場所: 広島国際会議場
  • 年月日: 2014-08-17 – 2014-08-20
• [学会発表] Ferroelectric phase of AgNbO3: a first-principles study (2014)
  • 著者名/発表者名: Hiroki MORIWAKE, Craig A. J. Fisher, Akihide Kuwabara, Desheng Fu
  • 学会等名: the 10th Japan-Korea Conference on Ferroelectrics
  • 発表場所: 広島国際会議場
  • 年月日: 2014-08-17 – 2014-08-20