研究課題/領域番号 |
24560835
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
魯 云 千葉大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (50251179)
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研究分担者 |
糸井 貴臣 千葉大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (50333670)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 熱電材料 / 金属複合 / 複合効果 / FEM / 複合モデル |
研究概要 |
平成24年度では,まずステンレス鋼,Cu/TiO2-xの複合熱電材料についてテンレス鋼,またはCu粉末の添加量,分散などを複合要因として熱電性能への影響を調べるとともにより高い熱電性能(大きな熱起電力,大きい電気伝導率,および小さい熱伝導率)を発現する複合要因を実験的に解析した.実験では放電プラズマ焼結(SPS法)によるCu/TiO2-x,ステンレス鋼/TiO2-xの複合熱電材料を作製して熱電性能を調べた.ステンレス鋼,またはCu添加粉末の添加量などをそれぞれ調整して熱起電力,電気伝導率,および熱伝導率への複合要因の影響を検討した.続いて有限要素法(Finite Element Method,以下FEMと略記)を用いた熱起電力の解析モデルを構築し解析を行った.FEM解析モデルの提案と構築を行い,一定温度における複合熱電材料のゼーベック係数,電気抵抗率および熱伝導率を総合的に解析し,性能評価をした.その結果,SUS304/TiO2はSUS304の体積率が大きくなるに従って電気抵抗率は低減し,またゼーベック係数は小さくなった.性能の指標となる出力因子(P = S 2/ρ,S はゼーベック係数,ρは電気抵抗率)は,SUS304の体積率が10%までは上昇し,15%以上では低下に転じた.また,SUS304の体積率が10%のとき,SUS304/TiO2の出力因子は最大の値を示し,973 Kにおいて約15 mW/K2mに達した.また,複合熱電材料の熱と電気を総合的に解析するFEM解析モデルを構築した.構築したFEM解析モデルを用いて,電気抵抗率,ゼーベック係数,および熱伝導率を併せて解析することができた.Cuの複合により無次元性能指数は調整可能で,有効電気抵抗率と有効熱伝導率の臨界体積率近傍において,複合による熱電材料の高性能化の可能性が解析的に示唆された.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度では放電プラズマ焼結(SPS法)によるTi/TiO2-x,Cu/TiO2-xの複合熱電材料を作製するとともに, Ti,またはCu添加粉末の添加量,粒径,分布,界面構造などをそれぞれ調整して熱起電力,電気伝導率,および熱伝導率への複合要因の影響を調べる予定であった. Ti/TiO2-については,同じ目的を達成するため,Ti粉末の代わりに安価で入手しやすいステンレス鋼粉末を採用した.なお,次年度に行う予定のFEM解析モデルの提案,構築および一部の解析は前倒しで行い,一定温度における複合熱電材料のゼーベック係数,電気抵抗率および熱伝導率を総合的に解析し,性能評価をした.その結果,SUS304/TiO2はSUS304の体積率が大きくなるに従って電気抵抗率は低減し,ゼーベック係数は小さくなった.性能の指標となる出力因子(P = S 2/ρ,S はゼーベック係数,ρは電気抵抗率)は,SUS304/TiO2の出力因子は最大の値を示し,973 Kにおいて約15 mW/K2mに達した.また,構築したFEM解析モデルを用いて,電気抵抗率,ゼーベック係数,および熱伝導率を併せて解析することができた.Cuの複合により無次元性能指数は調整可能で,電気抵抗率と熱伝導率の臨界体積率近傍において,複合による熱電材料の高性能化の可能性が解析的に示唆された.解析した結果はGEM(有効媒質理論)とよく一致した.さらに,Cu/TiO2-xの実験値はGEMとよく一致しており,解析結果と同様の傾向を示した.構築したFEM解析モデルは,直列型およびランダム分散型複合熱電材料の特性解析に有効である.これらの結果より本研究は,初年度で査読付き論文5件、国際会議を含めた研究発表5件をまとめ計画の通り完遂できた。
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今後の研究の推進方策 |
次年度ではTi/TiO2-x,Cr/TiO2-xの複合熱電材料を作製するとともに熱電性能の解析を行う。Ti,またはCu添加粉末の添加量,界面構造などをそれぞれ調整して熱起電力,電気伝導率,および熱伝導率への複合要因の影響を調べる。最も高い熱電特性を発現する複合要因を実験的に明らかにする。同時に構築した有限要素モデルに添加量,粒径,分布,界面構造を含む複合要因を導入する。有限要素モデルによってゼーベック係数(熱起電力),電気伝導率,熱伝導率に及ぼす添加量,分布,界面構造を含む複合要因解析する。その際,添加粒子のランダム分布にはこれまで当研究グループが開発した有限要素法を用いたモンテカルロシミュレーションのプログラムの一部を改造して用いる。材料実験および有限要素法解析で確定したパーコレーション体積率(粉末同士連結になる臨界体積率)について複合材料の電気的特性,または熱的特性の解析にこれまで用いられている有効媒質理論と浸透理論に粒径や界面要因を導入して理論的検討を行う予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
該当なし
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