研究課題/領域番号 |
24560835
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
魯 云 千葉大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (50251179)
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研究分担者 |
糸井 貴臣 千葉大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (50333670)
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キーワード | 熱電材料 / 酸化物 / 金属複合 / 複合効果 / FEM |
研究概要 |
これまで複合熱電材料のための電気と熱的特性を総合的に解析する目的で,Ti/TiO2-x,Cu/TiO2-xの複合熱電材料について一定温度における複合熱電材料の有限要素法(Finite Element Method,FEM)を用いた解析モデルを構築して解析してきた.本年度では,構築した複合熱電材料の解析モデルを用いて熱電特性の温度依存性の解析を行い,熱電性能に及ぼす複合効果と温度依存性の影響,さらに高性能化について検討した.特にCu/TiO2-x複合熱電材料についてFEM解析を行い,Cu体積率および温度依存性が熱電性能に及ぼす影響について実験および有効媒質理論(GEM)を用いて比較・検討した.その結果以下のことを明らかにした. (1)Cu/TiO2-x複合熱電材料において,Cu体積率が大きくなるに従って電気抵抗率は低下し,また温度に対する傾向は半導体的性質から金属的性質へ遷移があった. (2)熱伝導率はCu体積率と温度の上昇に従って増大した. Cuの複合による熱伝導率の増大および電気抵抗率の低減に対して,フォノン熱伝導率の上昇は抑制されている. (3)ゼーベック係数は温度の上昇に対して増大した.また,Cuの複合によって,ゼーベック係数の値は減少した.出力因子は温度の上昇に対して大きくなった. これらの結果は複合による熱電材料の高性能化に寄与できる.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度では,構築した複合熱電材料の解析モデルを用いて熱電特性の温度依存性の解析を行い,熱電性能に及ぼす複合効果と温度依存性の影響,さらに高性能化について検討した.具体的にCu/TiO2-x複合熱電材料についてFEM解析を行い,Cu体積率および温度依存性が熱電性能に及ぼす影響について実験および有効媒質理論(GEM)を用いて比較・検討した.その結果,金属複合熱電材料において,添加した体積率が大きくなるに従って電気抵抗率は低下し,また温度に対する傾向は半導体的性質から金属的性質へ遷移したことを明らかにした.ゼーベック係数は温度の上昇に対して増大した.また,金属複合によって,ゼーベック係数の値は減少した.それらによって出力因子は温度の上昇に対して増大した.また,金属体積率に対しては電気抵抗率の臨界体積率近傍まで上昇し,その体積率以上では低下に転じた.一方,実験結果においては,電気抵抗率と熱伝導率の臨界体積率に差があり,金属複合による電気抵抗率の大幅な低減に対してフォノン熱伝導率の上昇が抑制されていること,また比較的大きなゼーベック係数が維持されていることに起因して,無次元性能指数より高くなった. これらの結果により本年度では査読付論文5篇,国際会議を含めた研究発表8件をまとめ,関連する特許1件を出願した.研究計画の通り順調に進展している.
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今後の研究の推進方策 |
次年度では材料実験および有限要素法解析で確定したパーコレーション体積率(粉末同士連結になる臨界体積率)について複合材料の電気的特性,または熱的特性の解析にこれまで用いられている有効媒質理論によって詳しく検討を行う。同時に複合理論を基にマルティスケール制御によって複合熱電材料の観点から熱的特性と電気的特性への複合要因を総合して高性能化への提案を行う.本研究の最終年度として3年間での複合熱電材料の結果をもとに提案した熱起電力の複合モデルを総合的に検討して複合熱電材料における複合要因に関する考え方をまとめる.これらによって高性能熱電材料の開発および複合効果による熱電材料に関する理論体系の構築に寄与できるものを総括する.
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