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2012 年度 実施状況報告書

高温クリープにおけるひずみ加速指数と変形機構

研究課題

研究課題/領域番号 24560842
研究種目

基盤研究(C)

研究機関弘前大学

研究代表者

佐藤 裕之  弘前大学, 理工学研究科, 准教授 (10225998)

研究分担者 田中 俊一郎  東北大学, 多元物質科学研究所, 教授 (00345943)
研究期間 (年度) 2012-04-01 – 2015-03-31
キーワードクリープ曲線 / ひずみ速度 / 寿命予測 / 組織勾配 / 内部応力 / 残留応力 / 複合負荷 / 応力テンソル
研究概要

クリープ変形を理解し長時間寿命の評価に反映させるには,変形の様相を定量的に把握する必要があり,その方法のひとつとして代表者は,クリープ曲線の形状を代表させる量としてのひずみ加速指数を用いる方法を提案してきた。この方法を用いると,最小ひずみ速度と併せた定量化によってクリープ曲線を精度良く外挿できる場合がある。ひずみ速度の変化は材料学的組織の変化を反映し,ひずみ加速指数も変形機構と密接な関係があると予想される。
本研究ではひずみ加速指数の本質を明らかにするための,ひずみ加速指数と変形機構や組織変化との関係に関する知見を系統的に得るための研究の一環として,変形中の組織変化が明瞭な合金のひずみ加速指数と組織変化の様相を実験的に調べ検討することとした。
高温変形では,材料学的組織に分布や勾配があると,変形中に応力の再分配がおこるので,変形中の組織変化とひずみ速度変化が単相材とは異なる可能性がある。材料学的組織に分布をもたせる方法として,回転曲げと引張の複合負荷装置(RBT試験装置)を考案し,単相アルミニウム合金や,時効硬化型アルミニウム合金を対象として材料学的組織に勾配を形成する方法を見いだした。これらの合金のクリープ曲線は,勾配を持たない合金と異なる場合のあることを見いだし,ひずみ加速指数によって定量的に比較できることを確認した。RBTによって組織勾配を作ると,その内部の残留応力は複雑な分布を示すことを2D-XRD法によって明らかにした。
ひずみ加速指数を用いると,通常型とは異なる形状のクリープ曲線も定量的に評価できる。逆遷移型の遷移クリープや,S字型のクリープ曲線が現れる固溶強化合金についても,ひずみ独指数によってクリープ曲線の形状を定量的に評価できることを明かにした。ひずみ加速指数は,様々な種類の合金のクリープ曲線形状を評価する方法として有用と期待できる。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

初年度の計画および達成の状況は下記の通りであり,総合的に,おおむね順調に進展していると考えている。
(1)強化機構と「ひずみ加速指数」の関係の実験的評価:強化機構の異なる合金として,単相アルミニウム合金および時効硬化アルミニウム合金の「ひずみ加速指数」を実験的に評価し,その様相を調べた。変形前に組織の分布や勾配が存在する場合には,高温変形中に応力の再分配がおこるので,ひずみ速度変化やひずみ加速指数の様相が複雑な変化を示す可能性がある。組織勾配を形成し,クリープ特性を調べる方法を検討し,回転曲げ-引張複合負荷装置(RBT試験装置)を考案し,組織の分布を形成する方法を明らかにした。変形前の組織に勾配が存在すると,クリープ曲線の形状が変化することを明らかにした。さらに強化機構との関係も検討するために,より多様な合金でひずみ加速指数を評価することが第2年度以降の課題である。当初の予想とは異なる,興味深い意外な結果も得られつつあり,概ね順調に進展している。
(2)内部応力による組織変化評価と材料学的組織評価:2D-XRD法により,組織勾配が存在する場合に残留応力が複雑な分布を示すことを実験的に明らかにした。また,残留応力と内部応力の関係も示唆された。急変法による内部応力の評価結果をさらに蓄積し,比較をすることが第2年度以降の課題であり,概ね順調に進展している。
(3)「ひずみ加速指数」と組織変化の検討:材料学的組織とその変化の様相を,「ひずみ加速指数」の変化の様相と対比して検討するために,さらに材料学的組織を観察し,変形組織に起源を持つ応力場に関する情報を総合的に検討する必要がある。支配機構とひずみ速度変化の関係を検討するために,「ひずみ加速指数」に影響を与える因子を検討する必要があり,第2年度以降の課題として取り組む。
これらの状況を勘案し,概ね順調に進展していると考えている。

今後の研究の推進方策

本年度得られた組織勾配の形成方法を反映させて新たな実験を行うことができるようにするため,当初計画していた試験用治具の製作および試験装置の改良についての設計を変更した。このため,試験装置の設計製作および試験片の準備に当初計画以上の時間を要しており,第2年度に繰り下げて実験準備を行い実験を行う。X線法による残留応力の実験結果は,当初予想に比べて複雑な様相を示しおり,新たな装置の改良によりさらに多様な合金に対する知見がえられると期待される。総合的に見て大幅な遅延はなく,当初の計画に沿って研究を推進する予定である。

次年度の研究費の使用計画

次年度の交付予定の研究費と併せて,クリープ変形挙動を実験的に調べるための試験装置および試験用素材,組織観察用の諸装置を利用するための準備等に使用する。初年度に得られた知見を礎として,発展的に装置等の設計を変更したものであり,基本的に当初の計画に沿って使用する予定である。

  • 研究成果

    (19件)

すべて 2013 2012 その他

すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (17件) (うち招待講演 3件)

  • [雑誌論文] Distribution of residual stresses in 1070 single phase aluminum with grain size gradient formed by RBT treatment2013

    • 著者名/発表者名
      Y. Enomoto1, T. Nishimura, H. Sato, S.-I. Tanaka
    • 雑誌名

      Materials Science Forum

      巻: 未定 ページ: 未定

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Comparison of Internal and Residual Stresses Measured by Strain-dip test and XRD during High Temperature Deformation of Al-Mg Solid Solutions2013

    • 著者名/発表者名
      H. Sato, Y. Enomoto, K. Omote, S.-I. Tanaka
    • 雑誌名

      Materials Science Forum

      巻: 未定 ページ: 未定

    • 査読あり
  • [学会発表] ひずみ加速指数による逆遷移型のクリープ曲線の定量評価とクリープ曲線の外挿2013

    • 著者名/発表者名
      ○佐藤裕之、吉崎慶
    • 学会等名
      日本金属学会春期大会
    • 発表場所
      東北大学
    • 年月日
      20130327-20130329
  • [学会発表] ひずみ加速指数による銅合金のクリープ曲線解析の試み2012

    • 著者名/発表者名
      ○吉崎慶、佐藤裕之
    • 学会等名
      第52回日本銅学会講演大会
    • 発表場所
      東京工業大学
    • 年月日
      20121103-20121104
  • [学会発表] Distribution of residual stresses in 1070 single phase aluminium with grain size gradient formed by RBT treatment2012

    • 著者名/発表者名
      ○Y. Enomoto,T. Nishimura,H. Sato,S.-I. Tanaka
    • 学会等名
      9th International Conference on Residual Stress, (ICRS9)
    • 発表場所
      Congress Centre Garmisch-Partenkirchen, Germany
    • 年月日
      20121007-20121009
  • [学会発表] Internal nad Residual Stresses in High Temperature Deformation of Solid Solutions2012

    • 著者名/発表者名
      ○H. Sato,Y. Enomoto,K. Omote,S.-I. Tanaka
    • 学会等名
      International Conference on Residual Stress, (ICRS9)
    • 発表場所
      Congress Centre Garmisch-Partenkirchen, Germany
    • 年月日
      20121007-20121009
  • [学会発表] RBT処理によって組織勾配を形成した時効硬化アルミニウム合金のクリープ挙動2012

    • 著者名/発表者名
      ○榎本祐二、西村太一、吉崎慶、佐藤裕之
    • 学会等名
      日本金属学会2012年秋期大会
    • 発表場所
      愛媛大学
    • 年月日
      20120917-20120919
  • [学会発表] ひずみ加速指数による一次おび二クリープ曲線の外挿法の検討2012

    • 著者名/発表者名
      ○表皓介、 佐藤裕之
    • 学会等名
      高温強度と組織形成の材料科学研究会
    • 発表場所
      富山市
    • 年月日
      20120830-20120901
  • [学会発表] 引引張回転曲げ複合負荷により形成したアルミニウム合金の組織勾配とクリープ挙動2012

    • 著者名/発表者名
      ○榎本祐二、吉崎慶、佐藤裕之
    • 学会等名
      高温強度と組織形成の材料科学研究会
    • 発表場所
      富山市
    • 年月日
      20120830-20120901
  • [学会発表] Analysis of Creep Curve by Strain Acceleration Parameter in Sinter of Ultrafine Particles Made from SUS304 by Arc Plasma Method2012

    • 著者名/発表者名
      ○H. Sato,K. Otaka,Y. Enomoto,K. Omote
    • 学会等名
      International Workshop on Bulk Nanostructured Metals
    • 発表場所
      京都大学
    • 年月日
      20120626-20120629
  • [学会発表] RBT処理による時効硬化アルミニウム合金の組織勾配の形成

    • 著者名/発表者名
      西村 太一、榎本 祐二、○佐藤 裕之
    • 学会等名
      軽金属学会第122回春期大会
    • 発表場所
      九州大学
  • [学会発表] ひずみ加速指数によるSUS ナノパウダー焼結体のクリープ曲線の評価

    • 著者名/発表者名
      大高健、榎本祐二、○表皓介、佐藤 裕之
    • 学会等名
      日本金属学会2012年秋期大会
    • 発表場所
      愛媛大学
  • [学会発表] ひずみ加速指数を用いた外挿クリープ曲線に及ぼすひずみ範囲の影響

    • 著者名/発表者名
      太田宏生、大高健、吉崎 慶、○佐藤 裕之
    • 学会等名
      日本金属学会2012年秋期大会
    • 発表場所
      愛媛大学
  • [学会発表] ひずみ加速指数によるCuAl固溶体のクリープ曲線解析の試み

    • 著者名/発表者名
      ○吉崎慶、佐藤裕之
    • 学会等名
      第11回日本金属学会東北支部研究発表大会
    • 発表場所
      東北大学
  • [学会発表] RBTによって形成された組織勾配を持つA1070の残留応力分布

    • 著者名/発表者名
      ○榎本祐二、西村太一、佐藤裕之、田中俊一郎
    • 学会等名
      第11回日本金属学会東北支部研究発表大会
    • 発表場所
      東北大学
  • [学会発表] Al-Mg固溶体の内部応力と残留応力の比較

    • 著者名/発表者名
      佐藤裕之、榎本祐二、○表皓介、田中俊一郎
    • 学会等名
      第11回日本金属学会東北支部研究発表大会
    • 発表場所
      東北大学
  • [学会発表] 高温における固溶強化と高温変形

    • 著者名/発表者名
      ○佐藤 裕之
    • 学会等名
      日本鉄鋼協会 材料の組織と特性部会 若手フォーラム
    • 発表場所
      大分県玖珠郡
    • 招待講演
  • [学会発表] 新材料の産業利用に向けて

    • 著者名/発表者名
      ○佐藤 裕之
    • 学会等名
      弘前産学官連携フォーラム 第12回イブニングフォーラム
    • 発表場所
      弘前大学・コラボ弘大(弘前市)
    • 招待講演
  • [学会発表] 引張-回転曲げ複合負荷によって形成した組織勾配材の残留応力分布

    • 著者名/発表者名
      ○佐藤 裕之、 榎本 祐二、田中 俊一郎
    • 学会等名
      日本鉄鋼協会 評価・分析・解析部会、材料の組織と特性部会 合同研究会
    • 発表場所
      宮城県松島町
    • 招待講演

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公開日: 2014-07-24  

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