研究課題/領域番号 |
24560844
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
後藤 弘匡 東京大学, 物性研究所, 技術専門職員 (50596004)
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キーワード | ダイヤモンド合成 / リチウム / 高温高圧 |
研究概要 |
平成25年度はリチウムをドープしたダイヤモンドの合成に取りかかり、① Liをサンプルカプセルに内に封じる方法の開発とサンプルカプセル材の選定、② 最適な合成温度・圧力条件の探索を行った。 上記①については次の通りである。ダイヤモンドの原料としてあらかじめリチウムがドープされたグラファイトを用いたが、高温高圧合成中に原料からリチウムが放出されてしまった。更にこのリチウムがサンプルカプセルやその周囲にある物質と反応を起こし、一部の部品の融点が下がって溶融し、急激、かつ、大きな圧力抜けを引き起こすなど不具合が生じた。これを防ぐため、サンプルカプセルの材質をグラファイトに変え、更にサンプルカプセルの形状と封じ方に工夫を加えることにより、Liをサンプルカプセル内に閉じ込める事に成功した。 上記②に関しては、合成圧力と加熱条件を変えてダイヤモンドの合成実験を試みた。昇温速度を速く、かつ、低めの温度でダイヤモンドを合成した試料に対してラマン分光分析、X線回折実験を行ったところ、わずかだが有意に結晶の格子定数が大きくなっているダイヤモンドが一部に生成した事がわかった。この結果はダイヤモンドの格子中にLiがドープされ格子が広がった事を示唆している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
出発物質の入手と作製、及び、水分と極めて反応し易いリチウムを空気から遮断するサンプルアセンブリを構築するところまでは予定通りに進んだ。しかし、ダイヤモンドを合成するために試料に対して高温高圧を加えた所、サンプルからLiが放出されてしまい、このLiが周囲の物質と反応を起こすことで実験に様々な不具合が生じた。これらの原因を探り、問題を解決していくのに手間取った。このような状況であっても、不均一ながらLiがドープされたダイヤモンドの合成には成功し、得られた成果は学会でも発表している。以上を総合的にみれば、上記の区分に該当するだろうと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
ダイヤモンドの合成条件は絞れてきているので、このまま継続して均一にリチウムがドープされたダイヤモンドの合成を試みる。また、平成25度末からLi以外の軽元素をドープする試みをスタートさせているので、こちらも平行して進める予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
課題申請時は、今年度末に次年度の実験に使用する消耗品(圧力伝達媒体や出発試料としてに使用する各種元素類)をまとめ買いする予定であった。しかし、今年度末から当初の予定以外の出発原料を使用する事にしたため、今後の実験の進行状況によっては下手にまとめ買いをすると無駄が生じる可能性がでてきた。また、次年度には学会発表や外国雑誌への論文投稿を計画しているが、英文校正(ネイティブチェック)の他、共著者(研究を遂行中に遠方にも協力者ができた)との間で連絡を取り合うための諸経費(通信・交通費等)、実験計画当初に計上していなかった部分でもお金が掛かる事が予想されるようになった。科研費の基金化の目的の一つでもある無駄使いを防止し、かつ、必要な項目に確実にお金を投入するために繰り越す事にした。 本来まとめ買いする予定であった物品を精査してから購入し、残りは成果発表のための出張旅費や論文投稿時に必要になる諸経費に使用する。
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