研究課題/領域番号 |
24560848
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 名古屋工業大学 |
研究代表者 |
吉水 広明 名古屋工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (10240350)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 分子配向 / 液晶性高分子 / 気体分離膜 / 磁場配向 / 全芳香族ポリエステル / 拡散特性 |
研究概要 |
微視的に高秩序な分子ナノ構造を自発形成する液晶性高分子を用い,“高い透過性と分離能を兼ね備えた新規高性能気体分離膜”の創製を目的とし,液晶性高分子である“アルキル側鎖を有する全芳香族ポリエステル類”の合成を行った.具体的には,ピロメリット酸の1,4-ジアルキルエステルと4,4-ビフェノールから,全芳香族ポリエステル,B-Cn(n:側鎖炭素数)を合成した.nは6,10,14の3種である.得られた,B-C6及びB-C10,B-C14の液晶発現温度や自発形成される秩序構造の種類とそれらの形成温度条件等を,①熱分析(DSC),②核磁気共鳴,③赤外吸収,④X線回折測定から特定した.特定された秩序構造の自発形成条件を,9.4テスラの超電導磁石内で実行し,配向試料の調製を試みた.試作試料の磁場の印加方向に対する,秩序構造の配向方向やその様式を,①X線回折,②固体核磁気共鳴,③赤外二色性から調べた.高分子鎖が印加磁場方向に平行に並んだ配向構造が確認された.さらに,磁場勾配パルスNMR法による試料中のメタンの自己拡散係数を測定し,磁場配向させることにより気体の拡散特性が向上することを見出した.以上の結果より,①B-Cnは高磁場中で容易に配向構造を形成する.②B-Cnが自発形成する秩序構造は,気体分子にとっては異方的な拡散経路を提供する.の2点が明らかにされた.これらの成果は,本研究の目的である,「高い透過性と分離能を兼ね備えた新規高性能気体分離膜の創製」に向けて,B-Cnが好適な高分子素材の一つと成り得る証である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の目的達成への研究計画として,初年度には試料の合成と秩序形成能の確認並びに形成条件の特定を中心に進め,さらには強磁場下で秩序構造の配向制御を試みるとした.次年度以降に微視的な分子ナノ構造を強磁場下で巨視的に高度に配向させる手法を組み合わせて,フィルム状試料を調製し,各種気体の透過や収着実験などを行って,気体分離性能や拡散異方性などを詳細に検討する,とした.これらの研究計画に対し,当該年度に予定した二種類の試料のうち片方しか合成できなかったが,これの強磁場下での配向試料の調製には成功し,且つ2年目以降に計画していた気体の拡散特性評価の一部は既に実施できて,予想通りに拡散異方性を実験証明できた点は,当初計画を上回る進捗状況である.以上より,「おおむね順調に進展している」との自己評価をした.
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今後の研究の推進方策 |
1.当初予定していた液晶性ポリエステル,PBT-Onの合成を進め,既に種々の検討が進行しているB-Cnと比較検討できるように研究を進める. 2.超電導磁石内で配向試料を調製する専用試料調製台の試作機として,おおむね直径5ミリ,長さ10ミリの円柱状試料を調製できるものは完成したが,引き続き,おおむね直径20ミリの円盤状試料が調製できる専用試料調製台の制作を進める.最終的には回転ステージを取り付け,回転数や回転様式を制御できるようにしたい. 3.円柱状試料でも気体の拡散特性が計測できる,磁場勾配パルスNMR法を容易に適用できる専用試料管並びに圧縮気体導入機の制作並びに計測法の確立を進める。既に10気圧程度までの加圧下での計測は十分実施可能な状況にあるが,耐圧性能の向上を図り,数十気圧まで計測できるようにしたい. 4.円盤状試料を念頭に,各種気体の透過実験を実施できるように実験環境を整えつつ,試料調製後速やかに磁場配向試料に対する透過性能の異方性評価並びに気体分離能について検討する. 5.最終的に,B-Cn及びPBT-Onが「高い透過性と分離能を兼ね備えた新規高性能気体分離膜」と呼ぶにふさわしいものであることの実験証明をして,研究を取りまとめたい.
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次年度の研究費の使用計画 |
該当なし
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