研究課題/領域番号 |
24560849
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 愛媛大学 |
研究代表者 |
小林 千悟 愛媛大学, 理工学研究科, 准教授 (10304651)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 均一微細組織 / ゆらぎ / 相変態 / 高分解能電子顕微鏡法 / Ti合金 / Al合金 |
研究概要 |
本研究では、合金中の析出に必要な「固溶体中の構造・組成の不均一性(=構造・組成のゆらぎ)の発達」を高分解能透過型電子顕微鏡法にて定量的に明らかにし、それを応用して均一微細組織を形成させる組織制御法を確立することを目的としている。その目的達成のために、平成24年度は、固溶体中の組成ゆらぎを透過型電子顕微鏡法を用い解析する手法を確立することを主研究目標とした。組成ゆらぎの解析には各位置における組成(原子)を同定することが重要となるが、本研究では、高分解能像の中で原子の種類を判別可能(原子番号が大きく違うほど精度よく区別可能)な構造像と呼ばれる像を撮影し、その同定を試みた。なお、構造像の撮影においては、実験データを定量的に解析するためにイメージングプレートを用いた。具体的にはAl-Li合金の時効に伴う規則化および析出現象の解析を構造像を利用して実施し、ナノスケール・原子スケール領域の組成情報を取り出す手法の確立を行った。その結果、3.2×3.2 nm2という極微小領域でAlとLiの存在割合などの組成や規則度という情報を定量的に決定する手法が確立できた。この手法を元に平成25年以降の研究において試料のナノスケール領域における濃度の違いすなわち濃度ゆらぎの解析が可能となった。また、ゆらぎを利用した均一微細組織形成については、Ti-10V-2Fe-3Al(wt%)合金について、その熱処理条件を詳細に明らかにした。さらには、Ti2元系合金を調査し、その結果、Ti-5at%Mo合金においては同様にゆらぎによる均一微細組織形成が可能であることを見出した。しかし、Ti-4at%MoやTi-6at%Moではそのような組織制御が困難であり、その理由を平成25年度以降に明らかにする必要性が見出された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現在までに達成すべき目的は、固溶体中の組成ゆらぎを透過型電子顕微鏡法を用い解析する手法を確立することであった。具体的なゆらぎの解析には至っていないものの、その解析手法についてはほぼ確立できたため、順調に進展していると言える。また、ゆらぎを利用した均一微細組織形成についても、新たにTi-Mo系という2元系合金においてその現象を見出した点は重要で、Ti-V-Fe-Alといった多元系では解析が困難な組成ゆらぎの解析も容易に実施できるようになった。
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今後の研究の推進方策 |
固溶体の濃度ゆらぎの解析をTi-5~10at%Mo合金を用い実施する。Ti-Mo合金系では、高温相であるβ相からα相およびω相がそれぞれ500~700℃付近と200~500℃付近で生成する。そこで、1000℃のβ相固溶化処理の後、200℃から700℃まで100℃刻みで種々の時間、それらの相が析出する以前まで時効処理し氷水中へ焼入れる。そして、各温度・時効時間におけるβ相固溶体中の構造・組成ゆらぎの温度・時間依存性を定量評価する。評価法は、H24年度に確立する高分解能像を用いた方法とナノビームディフラクション法を用いた方法を併用する。一方、焼き入れω相の生成状況はMo濃度によって敏感に変化するため、析出前駆段階で生じると考えている濃度ゆらぎを解析するのに利用できると考えられるため、焼き入れω相の生成状況も合わせて解析していく。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度の研究費は、合金を作製するための母材や透過型電子顕微鏡(TEM)用薄膜試料作製のための加工・研磨消耗品および試薬、そして、TEM観察にかかわる消耗品に使用する。また、研究成果発表として、先端材料の国際会議であるPricm8に参加予定であり、その旅費等を本経費から支出することを計画している。
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