研究課題/領域番号 |
24560849
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研究機関 | 愛媛大学 |
研究代表者 |
小林 千悟 愛媛大学, 理工学研究科, 准教授 (10304651)
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キーワード | 均一微細組織 / ゆらぎ / 相変態 / 高分解能電子顕微鏡法 / Ti合金 |
研究概要 |
本研究は、合金中の析出現象に伴う「固溶体の構造・組成の不均一性の増大(=ゆらぎの発達)」を利用して均一微細組織を形成させる組織制御法を確立することを主目的としている。そして、透過電子顕微鏡法を利用して構造・組成のゆらぎの定量評価を行い、析出前駆現象である構造・組成ゆらぎについて知見を得ることも目標にしている。平成24年度は、固溶体中の組成ゆらぎを透過電子顕微鏡法を用い解析する手法を確立することを主な研究目標とした。組成ゆらぎの解析には各位置における組成(原子)を同定することが重要となるが、本研究では、高分解能像の中で原子の種類を判別可能な構造像と呼ばれる像を撮影し、その同定を行った。その結果、3.2 nm ×3.2 nmという極微小領域で組成や規則度という情報を定量的に決定する手法が確立できた。また、本研究の主目的である、ゆらぎを利用した均一微細組織形成については、Ti-10V-2Fe-3Al(wt%)合金を用い調査して、β相中にα相もしくはω相が析出する以前の析出前駆段階で熱処理を行うことにより、冷却中に生じるα”相への変態を促進できることが明らかとなった。平成25年度は、ゆらぎの解析を行う際にTi-10V-2Fe-3Al(wt%)合金のような多元系合金ではその解析が難しくなるため、Ti-Mo 2元系合金で同様な現象が生じる合金組成を探し、詳細な解析を行った。Ti-5at%Mo合金において同様な析出前駆段階による等温保持によってα”相の生成促進が可能であることを見出した。そして、そのような方法でα”相の生成促進を行った試料の機械的特性を調べた結果、α”相の生成促進により合金の低弾性率化を図ることができた。さらに、本手法との比較のため、均一組織形成の他の手法(析出物による不均一核生成を利用)についても検討し、α相微細析出に及ぼすω相の効果を明確にした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
25年度までに達成すべき目標は、固溶体中の組成ゆらぎを透過型電子顕微鏡法を用い解析する手法を確立するとともに、ゆらぎを利用した均一組織形成手法を明確にすることであった。ゆらぎの解析手法についてはほぼ確立でき、本研究の主題であるゆらぎを利用した均一組織形成手法について明確となった。したがって、順調に研究は進展していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
固溶体の濃度ゆらぎの解析をTi-6, 7at%Mo合金を用い実施する。平成25年度の研究を通じ、Ti-6, 7at%Mo合金では、高温相であるβ相から焼入れると焼入れω相が生成することを確認した。β相中に生成する焼入れω相は、その生成に伴い組成変動は伴わず、かつ、β相の各場所の組成により生成状態(整合・不整合度合)やその生成量が変化するため、焼入れω相の生成状態を利用して組成に関する情報を間接的に調べることができると考えられる。一方、直接的にEDS組成分析装置(透過電子顕微鏡に装備)を用いて組成ゆらぎを解析することも行うが、現状ではどのような規模で組成ゆらぎが生じているか不明であるため、まずは焼入れω相生成を利用して間接的に調べるとともに、直接的な組成ゆらぎの解析をEDS組成分析装置を用い平行して進める。さらに、H24年度に確立した高分解能像を用いた組成解析手法を併用し、ゆらぎについて詳細に解析する。
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次年度の研究費の使用計画 |
DV-Xα法による合金パラメータを用い、作製する合金を適切に選択し、合金の作製数を減らすことに成功した為、合金母材代や試料加工代が当初の予定より少なくすることができた為。 透過電子顕微鏡用薄膜試料作製の際にこれまで電解研磨法を用いているが、それと併用してイオンミリング法を用いる。次年度使用額は、その消耗品等に使用する。それにより、透過電子顕微鏡による解析をさらに進め、本研究の効率化を図る。
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