研究課題
本年度は、母物質CuMoO4のクロミズムの起源である構造相転移に起因する約13%の体積変化に伴う結晶の粉砕、即ち結晶サイズが小さくなる現象と磁気的性質との相関に関する実験的研究を詳細に実施した。具体的には、単結晶試料を用いて広範な温度変化を繰り返すことにより結晶を粉砕させながら高感度磁化測定装置を用いて測定を行った。その結果、非常に明確であった構造相転移温度は、結晶サイズの減少に伴い緩やかになる傾向を観測した。これは、構造相転移温度以下の低温相のキュリー定数が徐々に増加していくことを意味しており、強い反強磁性二量体の数が結晶内で減少していることを示唆している。また、強磁場磁化測定では、弱い反強磁性二量体の存在に起因する約20Tでの磁化の立ち上がりが結晶サイズの減少に伴い観測された。これらの実験結果から結晶サイズの減少、即ち粒径が小さくなることにより、結晶内の反強磁性二量体の相互作用が大きく変化していることを示唆している。以上の実験結果から結晶粒径(サイズ)と磁気的変化には強い相関があることが明らかとなった。さらに、SEMを用いて結晶粒径の測定を実施し、コア・シェルモデルを適用することにより実験結果の定量的な解釈を試みた。また、Moをイオン半径の異なるWを用いて約10%置換した試料では、単結晶試料と同様の磁気的性質を示すことを前年度までの研究において明らかにした。これは、元素置換によりWの周りにイオンが凝集した結果として結晶サイズが大きくなる効果を反映していると考え、遊星型微粉砕機を用いて人為的に粉砕し磁気的性質の測定を実施した。その結果、粉砕する時間の経過、即ち結晶サイズの減少に伴い、弱い反強磁性二量体の存在が観測された。
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