研究課題/領域番号 |
24560855
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研究機関 | 鹿児島大学 |
研究代表者 |
藤井 伸平 鹿児島大学, 理工学研究科, 教授 (90189994)
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研究分担者 |
小山 佳一 鹿児島大学, 理工学研究科, 教授 (70302205)
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キーワード | 磁気秩序秩序一次転移 / 第一原理計算 / 強磁場 |
研究概要 |
理論的研究では、Mn2Sb1-xZx (Z=As,Ge)およびMn2-xXxSb(x=0.5,1;X=Ti,Cr,Co,Cu)について計算を実行した。(昨年度比べ、元素ではZ=Ge、X=Ti,Crが、組成ではx=0.5が追加された。)(a)物質の磁気状態(フェリ磁性(FR)と反強磁性(AF))の相対的な安定性について、電子系のエネルギー比較により調べたところ、FRとAFの相対的安定性が実験結果と一致するケース、一致しないケースがあることが判明した。(b)X原子のサイト選択性(2種あるMnサイトのうちどのサイトを好んで置換するのか)については、非磁性原子(TiとCu)はMn(II)サイトを、磁性原子はMn(I)サイトを好む結果となり、実験結果と矛盾しない結果が得られた。 (c)Mn原子の周りの環境を変化させることによってFRとAFの相対的な安定を変えられることを見出した。 実験的研究では、以下のことを行った。 (1) Mn2-xCuxSb (x = 0.1)の常圧・強磁場下に観測されていたカイネティックアレスト(KA)効果は、高圧下においては強磁場下でも顕著に現れないことが明らかになった。これは、Mn2-xCoxSb系の特性と異なる。磁気緩和の測定から、小さいながらもKA効果は存在することが判明した。(2) Mn2-xCrxSb、Mn2-xCuxSb1-yBiy、Mn2-xCuxSb1-ySnyに関しては、反強磁性(AFM)-フェリ磁性(FRI)磁気一次相転移が観測されたが、Mn2-xFexSb1-ySnyに関しては、一次相転移は観測されなかった。その中で、Mn2-xCrxSbはKA効果が観測された。一方、Mn2-xCuxSb1-yBiy、Mn2-xCuxSb1-ySnyについては、前KA効果は観測されなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
Mn2Sb1-xZx (Z=As,Ge)およびMn2-xXxSb(x=0.5,1;X=Ti,Cr,Co,Cu)について計算が終了し、(a)物質の磁気状態(フェリ磁性(FR)と反強磁性(AF))の相対的な安定性、(b)X原子のサイト選択性、(c)AF状態の安定化の機構、について調査した。 Mn1-xXSb1-xZx系の系統的研究が順調に進み、実験結果らからはKA効果の起源がMn副格子の磁気的不安定性の可能性が示唆されつつある。本年度はホイスラ系試料より、この系に研究を集中した。ただし、この系の中性子散乱用の単結晶は原子力機構の実験設備が研究期間内に再開されないことが確実となり、一時中断している。
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今後の研究の推進方策 |
Mn2-xXxSb(x=0.25)について計算をおこない、AF状態の安定化の機構について調べる。 また、X原子とMn原子の不規則性の効果についても調べる。 研究が順調に進んだMn1-xXSb1-xZx系の実験的研究結果について、論文や学会等で公開する。強磁場や高圧下の実験について論文等で公開する。実験結果について理論グループと議論し、KA効果の本質的起源に迫る。
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