研究実績の概要 |
理論的研究では、以下のことを行った。Mn0.75Co0.25Sbの電子構造を計算し、(a) Co原子の不規則配列の磁気状態(フェリ磁性(FR)と反強磁性(AF))への効果、(b)Mn原子の周りの環境の変化とFRとAFの相対的安定性について詳細に検討を行った。”不規則配列”がAF状態の安定化には寄与しないが、”環境の変化”はAF安定化に寄与することを見出した。AFを安定化させる原子配置については、Mn0.8Co0.2Sbに関する実験データをみつけ、これとの比較を行い、計算と実験で詳細については多少異なる点が存在するものの、概ね一致していることを確認できた。これらについては論文発表した。 実験的研究では、以下のことを行った。Mn2-xCuxSb1-ySby (x = 0.06,0.1 y=0.06,0.1)および Mn2-xCuxSb1-yBiy (x= 0.06,0 y=0.06,0.1)などの試料合成を行い磁気一次相転移の出現を確認した。しかし、明確なカイネティックアレスト効果は観測されなかった。Mn2-xCuxSb系では圧力を印加することでカイネティックアレスト効果を見出した。つまり、加圧状態で一次相転移を磁場で制御すれば、カイネティックアレスト効果による機能性低下を防げることを示唆する重要な結果を得ることに成功した。 ホイスラー系については、以下のとおりである。磁場で磁気一次相転移を示すホイスラー合金:Ni46Mn41In13の磁場中構造解析結果を精査、関係研究者と慎重に議論した結果、明確なカイネティックアレスト効果は見られなかったが、磁場で磁気と結晶構造の一次相転移を弱い磁場で制御できることを確認し、論文発表した。磁場で磁気一次相転移を示すホイスラー合金:NiMnCoInについても同様のことを確認し、現在論文執筆中である。
|