本研究計画は磁歪材料を中心とした薄膜アクチュエータ用材料の特性に及ぼす高エネルギー粒子衝撃の効果を明らかにすることにより、マイクロアクチュエータやセンサデバイスに最適化された薄膜用磁性材料を創り出そうというものである。 H26年度においては、”1.新規薄膜アクチュエータ用磁性材料の検討”に関しては、固溶度を持つFe-Ga系と非混和系であるFe-In系の薄膜を作製し、その際に前年度までのラングミュアプローブ、ファラデーカップを用いた測定系にマルチグリッド型静電アナライザー(MGA)を加えることにより、成膜中のプラズマ分析を行った。その結果プラズマ中における蒸着粒子の持つ高い過剰エネルギーにより、Fe-Ga系、Fe-In系いずれにおいてもFeのBCC構造を持つ過飽和固溶体薄膜を形成することを明らかにした。また、過剰エネルギーを増加させるに従い、溶解度限が大きくなることを明らかにした。”2.薄膜アクチュエータ用磁性材料の特性制御”においては、従来のラングミュアプローブ測定に前述のMGAによるスパッタガスイオンのエネルギー測定を加えることにより、ラングミュアプローブによるシース領域での加速エネルギーに加え、陽光柱内でのスパッタガスイオンの熱運動によるエネルギーの測定が行えるようになり、イオン衝撃パラメータPiの値をより正確に求めることができた。その結果、成膜中のイオン衝撃を精密に制御でき、作製された磁歪薄膜の内部応力の制御を熱応力と分離して制御できることを明らかにした。 以上の成果に関しては第26回電磁力関連のダイナミクスシンポジウム(SEAD25)、や日本金属学会秋期講演大会等の国内学会において研究成果の発表を行った。さらにACTUATOR2014やCMSE 2014等の国際集会において発表を行い、日本金属学会誌やMaterials Transactionsなどの学術誌で公表した。
|