研究課題/領域番号 |
24560860
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 東海大学 |
研究代表者 |
長谷部 光泉 東海大学, 医学部, 教授 (20306799)
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研究分担者 |
鈴木 哲也 慶應義塾大学, 理工学部, 教授 (10286635)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | ステントグラフト内 / エンドリーク / 炭素系薄膜 / プラズマ / 薬剤徐放部材 / 血管内皮細胞 / 線維芽細胞 |
研究概要 |
致死的な結果を招く大動脈瘤に対し、体に優しい治療法として、血管内手術による「ステントグラフト内挿術」が広まっている.しかしながら、留置後の血管壁とグラフトの隙間からの血液再流入(エンドリーク)により、動脈瘤が再発・破裂をすることが最大の問題点である.本研究では、プラズマ技術によるグラフト表面形状制御および薬剤徐放制御システムの融合により、血管壁とグラフトの隙間の早期創傷治癒が可能となる新規素材開発を行う.本研究では、薬剤を含浸したポリマーを基礎材料に、血管細胞の接着・増殖を促進する新規材料開発を進める.ポリマー基材をプラズマ技術により処理し「ナノ・マイクロレベルでの表面形状」および「薬剤徐放特性」を制御することで、血管内皮細胞や線維芽細胞の接着・増殖を制御し、早期の創傷治癒に寄与する材料の創製を目指す. 平成24年度は、申請時実験計画に基づいて以下の3点を明らかにした. 1.プラズマ処理およびイオンビーム処理によって医療材料表面のパターニングのコントロールが可能であることを確認した(論文発表). 2.表面の形状および化学組成を制御したポリマー上に炭素系薄膜:ダイヤモンドライクカーボン(DLC)ナノ薄膜あるいはフッ素添加DLCを被覆することによって抗血栓性を有しかつ血管内皮細胞(ヒト臍帯静脈内皮細胞を用いて実験)の増殖性に問題ないことを確認した(論文発表). 3.疑似薬剤を含浸したポリマー材料を用いてプラズマ処理を施すことによって、薬剤の徐放スピードをコントロールできることを確認した(論文発表).
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
理由 当初の実験計画通り、おおむね順調に実験が進んでいる.薬剤徐放の実験については、実際の薬剤の候補であるbasic Fibroblast Growth Factor (bFGF)が高価であり、かつ濃度検出のためのキットも高価であるため、疑似薬剤を用いて十分な基礎的徐放実験を行ったため、bFGFを用いた実験については予備的実験にとどめた.
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今後の研究の推進方策 |
当該年度については上記「11.現在までの達成度」に記載の通りにほぼ順調に進捗し、プラズマおよびイオンビーム処理によって表面形状をコントロールすることが可能となった.また、基板に炭素系薄膜を被覆することによって抗血栓性を有し、かつ血管内皮細胞への毒性がなく、増殖性も問題ないことが確認された.薬剤徐放コントロールについては、疑似薬剤を用いてのプラズマ処理によるコントロールが可能であることを証明した.平成25および26年度については、当初の研究計画に従って研究を推進する予定である. <25 年度研究計画> 血管内皮細胞・線維芽細胞の増殖を促進するbFGF を含浸させたポリマーの作製条件及び徐放量の定量方法を検討する.材料表面の形状及び化学組成の変化を分析し、細胞増殖因子含浸の有無をFT-IR により評価する.また、細胞増殖因子を含浸させたポリマーに炭素系薄膜マイクロパターニングおよびAr プラズマ処理し、その徐放特性を調べる.細胞増殖因子徐放量の測定には、ELISA 法を利用する. <26 年度研究計画> 平成25年度に、細胞増殖因子の徐放特性の最適条件を明らかにした後、それらの新規素材に対して新たにヒト臍帯静脈内皮細胞・ヒト線維芽細胞を用いた細胞培養実験を行う.本実験により、ポリマー基材の表面性状、細胞増殖因子の徐放量、および細胞の接着性・増殖性の関係性を明らかにし、エンドリーク防止に向けた新規ステントグラフト素材としての性能を評価する.
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次年度の研究費の使用計画 |
平成24年度については、プラズマ処理による基板表面のコントロールおよび血管内皮細胞を用いた生体適合性試験、疑似薬剤を用いた薬剤徐放実験の予備実験を中心に実験を行った.平成24年度は線維芽細胞を用いた実験は行っていないため、線維芽細胞を用いた実験に関する消耗品については平成25年度に繰り越した. また、平成24年度については、細胞実験計画が予想よりも順調に進み、論文作成を先に行ったため、関連国際学会・国内学会の詳細な調査・発表は行うことができなかった.これに関しても、平成25年度に繰り越した.また、本研究進捗に欠かせない疑似薬剤ではない実際の薬剤を用いた基板からの薬剤徐放実験および血管内皮細胞・線維芽細胞生着への最適化については、当初の予定実験計画どおり、平成25年度に計上した予算により実験を施行する.
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