研究課題/領域番号 |
24560865
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 大分工業高等専門学校 |
研究代表者 |
松本 佳久 大分工業高等専門学校, 機械工学科, 教授 (40219522)
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研究分担者 |
湯川 宏 名古屋大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (50293676)
南部 智憲 鈴鹿工業高等専門学校, その他部局等, 准教授 (10270274)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 水素 / 新エネルギー / 燃料電池 / 金属物性 / 構造・機能材料 / 水素透過 / 水素脆化 / 小型パンチ試験 |
研究概要 |
本課題では水素環境中in-situ小型パンチ(SP)試験とSPクリープ試験とを融合したコンビナトリアル高温耐久性評価法を構築し,水素透過合金の延性-脆性遷移水素濃度(DBTC)解析とその発現機構解明を目指している。平成24年度はAE膜破壊検出,SP試験およびSPクリープ(SPC)試験を融合したコンビナトリアルその場高温耐久性評価法を構築することを主目標に置いて研究を展開した。得られた結果や知見を以下に要約する。 1.水素環境高温SPクリープ試験装置の組込およびガス分離性能評価,クリープ破断放出ガス検出機能の組込を行った。 2.純Nbおよびbcc固溶体単相であるNb-M(-X)(M, Xは,W, Moなどの遷移金属)合金インゴットをアーク溶解により作製した。これらの試料について,加工と熱処理による再結晶挙動,すなわち,結晶粒径の変化,母相硬さの評価およびin-situ SP試験によるDBTCの変化の解析及び水素環境高温SPクリープ試験を行った。この場合,各試料の573~823Kにおける水素圧力-組成-等温(PCT)曲線を求め,固溶水素濃度を把握した上で,in-situ小型パンチ(SP)試験およびSPクリープ試験を行った。 3.Nb中にWやMoを添加することによって回復温度が上昇することが明らかとなり,高温強度の維持あるいは向上が示唆された。また,WとMoの添加効果を比較すると,これらの添加元素間で回復温度に差が生じており,Wの方が回復温度の引上げ効果に優れていることや,僅か5mol%のW添加でも純Nbと比べて473Kも回復温度が上昇することを見出した。また,SPC試験においては,圧延時の圧下率増大に伴って結晶粒径が変化し,耐クリープ特性に影響を与えることも確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成24年度の当初計画では,AE膜破壊検出,SP試験およびSPクリープ試験を融合したコンビナトリアルその場高温耐久性評価法を構築することを主目標としており,以下の具体的達成目標を掲げていた。ここでは当該年度の進捗度を自己点検して達成度を評価した。各項目の達成度を括弧内に示す。 1.水素環境高温SPクリープ試験装置の組込およびガス分離性能評価,クリープ破断放出ガス検出機能設計・組込:(100%) 2.加工,熱処理による再結晶粒度と硬さの評価とin-situ SP試験及びクリープ試験によるDBTCの変化の解析:(90%) 3.水素化特性の定量評価:(40%) 尚,平成24年度において既に同時並行的に一部次年度(平成25年度)計画分も前倒し実施しており,総合的には事業期間全体の1/3を経過した段階で,研究実施計画(全体)に対して,その進捗率が総合的に40%程度であると考えているため,上記の達成度区分とした。
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今後の研究の推進方策 |
本研究課題はいずれも研究代表者が主体的に行うこととしているが,次年度以降についても引き続き,研究分担者の名古屋大学湯川助教および鈴鹿高専南部准教授の協力を得て共同で実施することとしており,各研究機関の特徴や問題解決にむけた得意分野をそれぞれの研究者が発揮することでこの研究をさらに進めて行きたいと思っている。また研究代表者は研究分担者,共同研究者らと常に相互訪問による情報交換を行っており,本研究に関しても連絡調整は十分に行えている状況であるので,これを有機的に活用したい。 さらに研究内容については,最近,高温部材(2.25Cr-1Mo低合金鋼)の経年劣化評価へのSPクリープ試験法の適用,SPクリープ特性に及ぼす表面性状や雰囲気の影響が考えられており,これらの知見や研究情報も金属水素分離膜の材料破壊リスク評価支援技術として活用することを考えつつ,本研究課題を発展させたいと考えている。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度の物品費としては,PCT曲線ベースで低温での平衡水素圧(固溶水素量に対応)を測定・制御するのに必要な水素圧力(または水素分圧)ゲージの購入を予定している。また,変形速度解析を実際の膜変形量の変化から行うためと膜破断検出のため,反射型レーザ判別変位センサおよびアンプユニットの導入も計画している。 長期耐久性能を発揮する新候補合金膜の創製においては,高純度原料金属や解離触媒としてPdターゲットが必要であり,配管継ぎ手,高純度ガス,薬品類とともに消耗品として購入する予定である。 さらに,研究分担者との研究打合せあるいは研究成果発表ための国内旅費についても,その使用を予定している。
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