研究課題/領域番号 |
24560865
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研究機関 | 大分工業高等専門学校 |
研究代表者 |
松本 佳久 大分工業高等専門学校, 機械工学科, 教授 (40219522)
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研究分担者 |
湯川 宏 名古屋大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (50293676)
南部 智憲 鈴鹿工業高等専門学校, 材料工学科, 准教授 (10270274)
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キーワード | 水素透過膜 / 合金設計 / バナジウム合金 / ニオブ合金 / タンタル合金 / 耐水素脆性 / 水素透過能 / 固溶水素濃度 |
研究概要 |
本課題では水素環境中in-situ小型パンチ(SP)試験とSPクリープ試験とを融合したコンビナトリアル高温耐久性評価法を構築し,水素透過合金の延性-脆性遷移水素濃度(DBTC)解析とその発現機構解明を目指している。平成25年度は,in-situ SP試験及びクリープ試験によるDBTCの変化の解析,水素化特性の定量評価,NbあるいはV水素透過合金膜の高温SPクリープ試験,クリープ破断寿命および各遷移域における変位速度の評価の各評価項目を主目標に置いて研究を展開した。得られた結果や知見を以下に要約する。 (1)純V,純Ta,各種VおよびTa合金について,523~773Kの広範な温度範囲における水素圧力-組成-等温(PCT)曲線を求め,固溶水素濃度を把握した上でin-situ 小型パンチ(SP)試験を行い,延性-脆性遷移水素濃度(DBTC)の温度,合金組成および組織依存性を検討した。また中温域での純VのDBTCの水素曝露時間による変化を詳細に検討した。 (2)PCT曲線の変曲点の温度依存性と合金効果を調べるための高温水素環境その場X線回折を行う配管・治具を設計・製作し,二次相転移の可能性検討の準備を行った。 (3)純NbおよびNb合金膜の一部についてメンブレンリフォーマ内を想定した温度および負荷水素圧力下で加速クリープ試験を行い,試験の問題点を抽出した。そして各クリープ速度遷移域の変形速度評価にて,パラメータに影響を及ぼす温度,組織および合金組成を検討した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初計画(平成25年度以降)では,水素固溶状態で水素透過合金の高温SP クリープ試験を行い,損傷メカニズムの検討,高温強度基礎物性データベースの作成,長期耐久性能を発揮する新合金膜の設計指針を確立することを目標にして研究を遂行する主目標としており,以下の具体的達成目標を掲げていた。ここでは当該年度の進捗度を自己点検して達成度を評価した。各項目の達成度を括弧内に示す。 1.水素化特性の定量評価:(80%) 2.真空中や水素環境中(水素固溶状態)での高温SPクリープ試験実施:(30%) 3.確立したコンビナトリアル高温耐久性評価による膜強度評価法の有効性検証:(100%) 尚,平成25年度においても既に同時並行的に一部次年度(平成26年度)計画分も前倒し実施しており,総合的には事業期間全体の2/3を経過した段階で,研究実施計画(全体)に対して,その進捗率が総合的に70%程度であると考えているため,上記の達成度区分とした。
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今後の研究の推進方策 |
本研究課題はいずれも研究代表者が主体的に行うこととしているが,次年度についても引き続き,研究分担者の名古屋大学湯川助教および鈴鹿高専南部准教授の協力を得て共同で実施することとしており,各研究機関の特徴や問題解決にむけた得意分野をそれぞれの研究者が発揮することでこの研究をさらに進めて行きたいと思っている。また研究代表者は研究分担者,共同研究者らと常に相互訪問による情報交換を行っており,本研究に関しても連絡調整は十分に行えている状況であるので,これを有機的に活用したい。 さらに研究内容については,最近,研究代表者の所属機関にて,FE-SEMやXRDが新しく整備されており,これらも有効活用して得られた知見や研究情報も金属水素分離膜の材料破壊リスク評価支援技術に応用し,本研究課題を発展させたいと考えている。
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次年度の研究費の使用計画 |
耐水素脆性と水素透過性能に優れた合金膜の機械的性質を検討するために,水素環境in-situ小型パンチ(SP)試験治具のベローズ部品の特殊仕様(高温,高圧水素ガス対応)設計を行い,購入を予定していた。しかし,詳細な技術仕様の策定に時間を要したことと,これが量産品ではなく特殊仕様であるために納期の問題が発生し,発注を一旦断念したことによるものである。尚,当該年度では既存の成形ベローズにて対応出来たため,研究の進捗には影響が無かった。 次年度の物品費としては,PCT曲線ベースで固溶水素量に対応した高い平衡水素圧下で水素環境in-situ小型パンチ(SP)試験を実施するために必要な治具や配管等の各種構成部品の購入を予定している。 長期耐久性能を発揮する新候補合金膜の創製においては,高純度原料金属や解離触媒としてPdターゲットが必要であり,配管継ぎ手,高純度ガス,薬品類とともに消耗品として購入する予定である。 さらに,研究分担者との研究打合せあるいは研究成果発表ための国内旅費あるいは外国旅費についても,その使用を予定している。
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