研究実績の概要 |
水素環境中in-situ小型パンチ(SP)試験とSPクリープ(SPC)試験とを融合したコンビナトリアル高温耐久性評価法を構築し,水素透過合金の延性-脆性遷移水素濃度(DBTC)解析とその発現機構解明を目指して研究を展開した。得られた結果や知見を以下に要約する。 1.水素環境高温SPC試験治具,クリープ破断放出ガス検出機能等の組込を行った後,bcc単相のNb-M(-X)(M, XはW, Moなどの遷移金属)合金試料について,加工と熱処理による再結晶挙動の評価およびin-situ SP試験によるDBTC変化の解析,水素環境SPC試験を行った。ここで各試料の573~823Kにおける水素圧力-組成-等温(PCT)曲線を求め,固溶水素濃度を把握した上で各試験を行った。 2.Nb中にWやMoを添加することで回復温度が上昇し,高温強度の維持・向上が期待できることを示した。またWが回復温度の引上げ効果に優れており,僅か5mol%のW添加でも純Nbと比べて473Kも回復温度が上昇することを見出した。SPC試験においては,圧延時の圧下率増大に伴って結晶粒径が変化し,耐クリープ特性に影響を与えることも確認した。 3.純V,純Ta,各種VおよびTa合金について523~773Kの温度でPCT曲線を求めてDBTCの温度,合金組成および組織依存性を検討した。さらに中温域で純VのDBTCを調べ,この遷移濃度が温度に依存しないことを明らかにした。 4.VのDBTC付近の固溶水素濃度でin-situ XRD測定を行ったところ,希薄な濃度域では固溶水素量の増加に伴って直線的に格子膨張するが,その後は格子膨張量変化が緩やかになっており,固溶水素が格子内の侵入サイト以外の組織不連続域や転位などの欠陥にトラップされることで破壊に対する抵抗が引き下げられた可能性があることを見出した。
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