本課題は、マンニトールとホウ酸、ユウロピウムの各水溶液を中性条件下で混和することにより自発的に形成する配位錯体 [(Man-B)3-Eu] を基に、糖アルコール、ホウ素、希土類元素で構成される安全性の高い水溶性蛍光錯体の開発に向けて、基礎的知見を得ることを目的としている。 H26年度は塩が存在しない条件下で配位錯体 [(Man-B)3-Eu] を精製し、NMR解析に供することができる量(数百マイクログラム)を確保することとした。前年度、資生堂社から検出器を借り受けて確立した、milliQ水を溶離液とするゲル濾過カラムクロマトグラフィにより、希薄な試料溶液を繰り返しHPLCにインジェクションし、配位錯体が溶出する画分を分取した。分取した希薄溶液を凍結乾燥して保管し、10 mmolに相当する試料を分画し終えた後、ゲル濾過カラムクロマトグラフィならびにマススペクトルにより分画試料の精製度を確認したところ、分取試料に [(Man-B)3-Eu] が含まれているものの、原料の塩化ユーロピウムも存在することが判明した。配位錯体試料液の液性を中性から酸性もしくは塩基性に変化させて試料を調製し精製操作を行ったが、[(Man-B)3-Eu] を単離することはできなかった。その原因として、高濃度溶液中では、配位錯体 [(Man-B)3-Eu] が一部解離する可能性が示唆された。
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