研究課題/領域番号 |
24560868
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 岩手大学 |
研究代表者 |
八代 仁 岩手大学, 工学部, 教授 (60174497)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 固体高分子形燃料電池 / セパレータ / ステンレス鋼 / 腐食 / 表面処理 |
研究概要 |
固体高分子形燃料電池用金属製セパレータの腐食挙動を研究するために、申請者が提案した、流路形成材と仕切り板からなる合わせ型セパレーターを種々の材料の組み合わせとして試作した。本セパレータはワイヤーカット放電加工で作ることができるため、切削加工で作成するセパレータに比べて安価なうえ、様々な材料の組み合わせが可能であるという特徴がある。 このような特徴を生かして、流路形成材に高窒素ステンレス鋼をはじめとする様々な材料を適用して発電性能を評価するとともに、表面に形成される不動態皮膜の解析などを進めた。 また流路形成材をグラッシーカーボンで作成し、底板に種々の材料を試した結果、18%クロムであるSUS430ステンレス鋼を用いても、セル性能はほとんど低下しないことが明らかとなった。この場合SUS430ステンレス鋼製底板には多少の腐食が認められたが、流路形成材が腐食した場合と異なり、MEAとの接触抵抗が増加したり、腐食生成物によってMEAが汚染されたりしていないことが確かめられた。さらに底板をアルミニウムにした場合でも、ステンレス鋼と同等の発電性能が得られた。このようにセパレータに求められる耐食性は、MEAとの接触部で最も厳しく、ガスや水が流れる流路部の底では求められる耐食性はそれほど高くないことが明らかとなった。 このほか、ステンレス鋼とMEAとの接触抵抗を低減する手法として、電気化学的窒化法に注目し、硝酸溶液中でカソード分極したステンレス鋼上に薄い窒化物層が形成されること、その窒化物層はPEFC環境下においても安定であること、この処理をしたステンレス鋼とMEAとの接触抵抗は著しく低下すること、実際にこの処理をおこなったステンレス鋼製セパレータを用いて発電試験を行った結果、グラファイトセパレータを使用した場合と同等のセル性能が得られること、などを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
申請書に記載した、申請者独自の合わせ型セパレーターを種々の材料の組み合わせとして試作する計画は、おおむね順調に進展している。流路形成材をグラッシーカーボンで作ることは、当初予想していたより多くの困難を伴ったが、年度内には試作品が完成した。 合わせ型のセパレータの特徴を生かした応用として、ステンレス鋼の電気化学的窒化についても検討した。この研究内容は申請書では予定していなかったが、海外の最新情報に刺激を受け、本研究の最終的な目的にも合致すると判断し、急遽研究内容を拡張して実施したものである。
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今後の研究の推進方策 |
平成24年度に引き続き、合わせ型セパレータを種々の材料の組み合わせとして作成し、発電試験を継続する。発電後の流路形成材および仕切り板の腐食状況を詳細に調べるとともに、発電中のセルインピーダンス評価を行う。平成25年度は、特に鉄を取り上げ、鉄をセパレータ環境にさらしたときの腐食速度を評価することで、セパレータが置かれる環境についての知見を深めたい。
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次年度の研究費の使用計画 |
該当なし
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