研究課題/領域番号 |
24560868
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研究機関 | 岩手大学 |
研究代表者 |
八代 仁 岩手大学, 工学部, 教授 (60174497)
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キーワード | 固体高分子形燃料電池 / セパレータ / ステンレス鋼 / 腐食 |
研究概要 |
金属製固体高分子形燃料電池(PEFC)用セパレータを実用化するためには、セパレータが置かれる腐食環境を理解する必要があるが、セパレータ内に様々なセンサー類を組み込むことは容易でない。そこで、セパレータ材料として敢えて耐食性の不十分な金属材料を用い、腐食速度を評価することで、セパレータの腐食環境を理解することを試みた。これまでに開発した独自のデザインの鉄製セパレータを用いて発電試験を行い、鉄の腐食挙動を評価するとともに、模擬PEFC環境における腐食試験を行って腐食速度を比較した。2 ppmのフッ化物イオンを含むpH 2.3~4.3の硫酸塩溶液を含浸させたカーボンペーパーに接触させた鉄の腐食速度は353 K、+600 mV(vs.SCE)において2.3~1.5 nm/hを示した。一方実際のPEFCに鉄製セパレータを組み込んだ場合、カソード側の鉄のリブ部における腐食速度はガス入り口から出口にかけて0.4 ~3 nm/hであった。このことはガス入り口側より出口側の腐食性が厳しく、pHが低下していたことを示唆している。これらの結果は、先にステンレス鋼製セパレータを用いて発電試験を行い、表面に生成する不動態被膜を解析した結果、出口側で酸性化に起因すると考えられるクロムの濃縮が生じていたことと符合する。一方、流路の底部における鉄の腐食速度はリブ部に比べて一桁以上小さかった。このことは、流路底部の腐食環境はリブ部に比べてマイルドであり、材料を使い分けることが可能であることを示唆している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
鉄製セパレータを用いてPEFC発電試験を行い、腐食速度を求めた研究例はこれまで報告されておらず、研究の目的である「腐食挙動を通した環境推定」がほぼ達成できたといえる。
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今後の研究の推進方策 |
腐食速度のデータの精度を高めるために、セパレータの表面仕上げ精度をさらに上げて実験を行いたい。 鉄製セパレータに加えてアルミニウム製セパレータを用いて同様の試験を行い、鉄の実権から得られた結論の妥当性をさらに検証したい。
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