研究課題/領域番号 |
24560878
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
才田 一幸 大阪大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (30178470)
|
研究分担者 |
森 裕章 大阪大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (10294026)
荻原 寛之 大阪大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (80455279)
|
研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
|
キーワード | 拡散接合 / 水素拡散誘起変態 / チタン / ジルコニウム / 組織解析 / 接合継手特性 |
研究概要 |
チタンおよびジルコニウムの低温精密接合技術として、水素によるβ変態温度降下を利用して接合部を局部的に低温β変態させることにより無変形接合を達成する全く新たな接合方法(水素拡散誘起変態を利用した低温精密接合法)を提案・開発することを目的とした。本年度は、水素によるβ変態温度の低温化および接合過程の水素拡散誘起変態挙動について検討し、接合過程における母材の変形挙動について調査した。 水素による低温変態挙動を解明することを目的として、陰極チャージによる水素添加材に対して電子顕微鏡による組織解析を行い、チタンおよびジルコニウムの水素化物(TiHおよびZrH)の生成を確認した。水素添加材の変態挙動(β変態温度の低温化)を明らかにするため、加熱に伴う組織変化の直接観察、β変態温度の測定、生成相の変化と変態領域の調査を実施した。その結果、無処理チタンのβ変態温度は882℃であるが、水素チャージ時間が増加するに伴いβ変態温度が低くなり、水素チャージ時間500ksにてβ変態開始温度は約460℃まで低下することが明らかとなった。また、水素チャージ時間300ksの試料を600℃×0.6ksの条件で熱処理すると、水素チャージ面付近においてβ変態したときの特徴である鋸歯状α組織が観察され、水素チャージにより低温でβ変態したことが確認された。 接合過程の母材変形挙動を明らかにするため、接合過程における母材の変形挙動を評価し、無変形条件範囲を確定した。その結果、チタン接合では接合温度600~800℃で変形率は目標値である2%以内に抑えられた。ジルコニウム接合では、接合温度750~820℃の場合は変形率は0.2%以下であったが、接合温度870℃の場合は0.77%であった。このことから、β変態温度以下の接合温度では接合過程における変形率が十分低いことが明らかとなった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初計画で策定した検討項目は、すべて遂行することができ、おおむね望ましい実験結果が得られている。特に、水素チャージにより接合面での低温β変態の実現性を得たことは、今後の研究に大きな意義があるものと言える。また、低温β変態が生じる接合条件範囲では、ほぼ無変形接合が達成できる可能性が示された。このことから、現在までの研究の達成度は、ほぼ100%であると判断している。
|
今後の研究の推進方策 |
本研究課題の今後の推進方策としては、当初計画の通り、接合性の評価および接合部の組織観察を実施する予定である。接合性に及ぼすプロセスパラメータの影響では、水素添加したチタンおよびジルコニウムの接合性に及ぼすプロセスパラメータの影響を調査し、接合可能条件範囲を確定する予定である。検討項目は、接合状況(接合率)に及ぼすプロセスパラメータの影響、接合可能条件範囲の確定を計画している。接合部の組織解析では、接合部の組織的特徴、元素分布および生成相を明らかにする予定である。検討項目は、接合部のマクロ・ミクロ組織(組織的特徴の把握)、接合部の元素分布および生成相同定を計画している。
|
次年度の研究費の使用計画 |
平成25年度は、物品費として400,000円、旅費として1,100,000円を使用することを計画している。物品費では、接合性の評価と接合部の組織解析を行うため、組織解析用消耗品、試験片加工および薬品類をそれぞれ150,000円、200,000円、50,000円を使用する計画である。また、旅費としては、研究情報収集あるいは成果発表を目的に、外国出張を2回(各550,000円)を予定している。
|