研究課題/領域番号 |
24560879
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
寺崎 秀紀 大阪大学, 接合科学研究所, 准教授 (20423080)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | M-A組織 / 破壊単位の結晶学的解析 / 組織変化 / 組織予測 |
研究概要 |
実験目的に適した、高張力鋼(800kg級)の準備を終わらせ、粗粒HAZの再現熱サイクルの付与および熱サイクル下の組織発展の観察を、赤外線集光加熱炉およびレーザ顕微鏡からなるシステムを用いて実施した。熱サイクルを付与後の試験片のSEM-EBSD観察により、M-A組織を観察し、研究ターゲットとなる塊状および棒状のM-A組織の形成を確認した。以上の実施の結果、熱サイクル付与時に観察した、ベイニティックフェライトの組織発展(変態温度、核生成位置、組織形態、成長方向の情報)の仕方に、結晶学的に2つタイプがあることを見いだし、またそれが、形成されるM-A組織の形態、M-A組織中のオーステナイト相の相安定性と強い関係があることを見いだした。これらの成果をまとめ、査読付き論文(Metallurgical and Materials Transactions A誌)に発表した。発表内容のさらなる解釈の深化も進んでおり、M-A組織を原因とする組織的な破壊単位に対する結晶学的理解や、M-A形成箇所の予測に展開できるような基礎原理を得ている。これら内容により、本研究の大目標である、M-A組織の生成制御材開発への展開に対して重要な知見である、“M-A組織の形成場所とその形態の予測”につながる基礎的原理を整理することができた。 さらに、SEM-EBSD-FIB装置の使用環境に対応して、放射光によるM-A組織中のオーステナイト相の結晶構造解析を行った。上記、組織発展を観察した試料をワイヤー状に加工し、エネルギーが30 keVのX線を用いてデバイシェラー法にて透過測定した。その結果、高指数の反射まで残留オーステナイトの回折データを得ることができ、リートベルト解析に資する回折データを得ることに成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
M-A組織形成環境において、重要なものの一つに、ベイニティックフェライトの組織発展があげられるが、今年度は特に、この組織発展とM-A組織の形態、およびオーステナイトの安定性について、直接観察および結晶学的解析を通じて、新たな知見を得つつ、整理することができた。具体的には、溶接熱影響部における連続冷却サイクル下のベイニティックフェライトの組織発展におけるバリアント選択とその成長形式が、塊状、棒状のM-Aの形成につながり、またオーステナイト相の安定化の原因因子となっていること抽出でき、研究目的に対する基礎知見を早くも得ることができた。また、M-A組織を原因とする破壊の組織単位に対する結晶学的な理解や、M-A組織形成箇所の予測に対する基礎原理を確立することができたため、当初の計画以上の知見を得ることができた。 さらに、M-A組織中の結晶構造を明らかにするための、放射光実験も先行して行い、充分なデータを得ることに成功した。そのため、来年度の研究への展開状況も含めて、当初の計画以上の達成度を得ることができた。
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今後の研究の推進方策 |
平成24年度に取得した、残留オーステナイト相の放射光データの結晶構造解析をすすめ、固溶炭素量に依存する格子定数およびミクロひずみを解析する。さらに、SEM-EBSD-FIB解析による、M-A組織の三次元形態の解明を進め、M-A組織中のオーステナイト相の安定性と組織形態の観点から平成24年度成果との関係を検証する。最後に、これら知見をもとに、M-A組織を原因とする組織中の破壊単位の特徴の整理、とM-A組織形成箇所の予測および組織形成を防止する指導原理をまとめる。
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次年度の研究費の使用計画 |
該当なし
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