平成26年度は現在までに得られた,調質鋼再現溶接熱影響部(粗粒域相当)における残留オーステナイトの相安定性に関する知見の産業応用への展開と成果発表を計画していた.今年度前半において,応用展開として,溶接部の機械特性と研究知見との関係を明らかとした.具体的には,同溶接部を対象にじん性を評価する上で重要な概念である,有効結晶粒の可視化を行い,さらにき裂進展挙動との対応を検証した.大入熱溶接の遅い冷却速度が,ベイングループを主とした組織を形成し,有効結晶粒の大きな組織を形成するといった知見に基づき,ベイングループの考え方に基づいて,有効結晶粒を可視化,定量化した.さらに,シャルピー試験時に生成する二次クラックとの対応を検証し,可視化した有効結晶粒とき裂進展挙動が対応していることを明示した.さらに,同組織のベインゾーン内に存在する最密面グループ(CPグループ)境界は,21°以内の結晶方位差があること,およびこの境界にM-A組織ができやすいという,今までに得てきた知見に鑑みて,CPグループ境界が,き裂進展に対して,(ベイン境界に対して相対的に)ローカルな変化を起こすことを,結晶方位解析,M-A組織のSEM観察結果を併用して,明らかとした.これら成果を,Metallurgical and Materials Transacitons A誌に発表した. 今年度後半においては,成果発表に努め,学会発表を初めてとして,多数の報告を行った.特に,10月,11月にはAUN/SEED-NET Regional Conference(マレーシア)において,本研究内容をまとめたプレナリー講演を務める等,2件の招待講演を行った.
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