研究課題/領域番号 |
24560884
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 島根大学 |
研究代表者 |
北川 裕之 島根大学, 総合理工学研究科(研究院), 准教授 (00325044)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 熱電変換材料 / キャリア濃度 / 電気伝導率 / ゼーベック係数 |
研究概要 |
Bi_2Te_3系熱電材料は,異方性が強く,熱電性能は六方晶表示した場合のc面内で良好である。我々は,高性能方向に優先方位をもつBi_2Te_3系材料の簡便な作製手法として,スライドボートを用いた液相成長プロセスを試みている。本プロセスによるビスマス-テルル系材料は面内方向と高性能方向が一致しており,高移動度,低抵抗により熱電性能が向上する。しかしながら,p型Bi_2Te_3-Sb_2Te_3においては,液相成長プロセス中のTeの揮発損失によりャリア(正孔)濃度は8~10×10^<25>/m^3とやや高い値となる。そこで,本年度は揮発損失成分の補充によるキャリア濃度制御を試みた。具体的には仕込み時に過剰のTeを加えた組成Bi_<0.5>Sb_<1.5>Te_3+ 2~10mass% Teをスライドボートを用いた液相成長法にて作製し,キャリア濃度および熱電特性を評価した。 300Kにおけるホール係数測定の結果,キャリア濃度は仕込み時のTe量に依存して減少し,6 mass%添加で3.3×10^<25> m^<-3>となった。熱電特性はキャリア濃度に依存して変化し,室温における出力因子は4 mass%添加試料(キャリア濃度4.6×10^<25> m^<-3>)で最大値(4.4×10^<-3>W/K^2m)となった。このように,簡便・短時間のプロセスで高出力因子を有するp型Bi_2Te_3系熱電材料の作製が可能であることが示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では,スライドボートを用いた液相成長法によるビスマス-テ ルル系材料の作製において,(1) p型Bi_2Te_3-Sb_2Te_3におけるキャリア濃度制御,(2) n型Bi_2Te_3-Bi_2Se_3への適正不純物の選定とキャリア濃度制御,(3) 本手法で得られる成長結晶の配向と物性の関係を明らかにすることを目的としている。 平成24年度は,スライドボートを用いた液相成長によるp型Bi_<0.5>Sb_<1.5>Te_3のキャリア濃度制御技術を確認し,室温付近で,大きな出力因子を得ることに成功した。この結果は,査読付学術雑誌への掲載が確定している。また,n型Bi_2Te_2.85Se_0.15材の作製および評価にも着手しており,概ね予定通りに進行している。
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今後の研究の推進方策 |
スライドボートを用いた液相成長法によるn型Bi_2Te_3-Bi_2Se_3の作製に重点を置いて研究を進める。Bi_2Te_<2.85>Se_<0.15>n型材料についてスライドボート法により材料作製を行い,組織,結晶配向性を調べる。また,ドーピング元素によるキャリア濃度制御に関してはにBr,Cuについて系統的な調査を行う。特に,Cuを添加したn型Bi_2Te_3の熱電特性は良好である一方で時間とともに物性が変化する時効特性があること,時効特性は作製プロセスに依存して異なることが指摘されている。Cu添加Bi_2Te_<2.85>Se_<0.15>に関しては時効特性についても調査し,熱的な安定性を明らかにする。また,同様の成分系を,粉末冶金的手法により作製し,物性の違いを比較・検討する。組織,結晶構造評価についても調査し,物性と関連づけた考察を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
該当なし
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