高性能方向に優先方位を持つBi_2Te_3系熱電材料の簡便な作製手法として、スライドボートを用いた液相成長法を検討した。本年度はn型材料として①Cu添加Bi2_Te_<2.85>Se_<0.15>、②Br添加Bi2_Te_<2.85>Se_<0.15>および ③Bi_2Te_<3-x>Se_x (x=0.15-0.5)を同手法で作製し、熱電特性を評価し、それぞれの物性を比較検討した。 Cu添加Bi2_Te_<2.85>Se_<0.15>は4 mW/K^2mを超える出力因子が安定して得られるのに対し、Br添加試料では3×10 mW/K^2m程度の値であり、その値も作製試料によってばらつきが大きいことが確認された。同一試料内の局所のゼーベック係数を調べたところ、Cu添加試料はばらつきが少ないのに対して、Br添加試料は大きなばらつきが認められた。また、Bi_2Te_<3-x>Se_x (x=0.15-1.5)の場合は、x>0.9で負のゼーベック係数が得られるものの、高抵抗となる傾向にあり、出力因子は低い値にとどまった。 以上の実験結果から、スライドボートを用いた液相成長法によるn型Bi-Te-Se系材料の作製においてはCuが有効なドーパントであり、ドーピング量を適切に選択すれば、高出力因子材料が再現良く作製可能であることことが示された。
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