研究課題/領域番号 |
24560885
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研究機関 | 九州工業大学 |
研究代表者 |
横山 賢一 九州工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (80308262)
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研究分担者 |
酒井 潤一 早稲田大学, 理工学術院, 教授 (90329095)
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キーワード | 腐食防食 / 水素脆化 / 生体材料 |
研究概要 |
本年度は、生体用金属材料について、水素吸収量だけでなく固溶水素や水素化物などの存在状態の違いに注目して機能劣化と機能誘起の特徴を調べ、以下の知見を得た。 水素吸収後の純Tiを大気中で熱処理することで、水素化物分解による試料外への水素放出を抑制し、微細な水素化物が析出した母相を取り囲むように粗大な水素化物が析出した領域と母相と粗大な水素化物が混合した領域に大別される微視的に不均一で巨視的に均一な組織形態とすることに成功した。この組織の場合、引張試験において水素脆化するのに十分な水素量であるにもかかわらず、数十%程度の伸びと強度が上昇することが明らかになった。破面解析から巨視的及び微視的に塑性変形していることも確認された。これらのことから、水素吸収後の組織制御によって機械的性質の向上が誘起されることが示唆された。 Ni-Ti超弾性合金にほとんど水素脆化しない程度の微量の水素を添加すると、生理食塩水中において局部腐食が抑制されるという機能が誘起される。本年度では、母相あるいは応力誘起マルテンサイト相の弾性域に対応する応力を負荷した場合においても、その機能は保持されることを明らかにした。また、定電位を印加しながら応力誘起マルテンサイト変態させた場合は、局部腐食発生電位が貴な方向へシフトすることが確認された。これらのことから実際の使用においても水素添加による局部腐食の抑制が期待される。 Ni-Ti超弾性合金で明らかにしてきた相変態と水素との相互作用による脆化は、準安定オーステナイト系ステンレス鋼の水素脆化においても支配的であることを水素の存在状態を変化させて破断させた試料の破面観察などから明らかにした。 以上、水素吸収による機能の誘起に関して得られた結果は実用的に大きな意義を持ち、機能の劣化の機構に関して得られた知見は学術的にも重要である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度で得られた結果の一部は、学会などで研究成果としてすでに発表しており、当初計画通り進展しているため。
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今後の研究の推進方策 |
本年度までに得られた知見をさらに発展させ、当初の計画通り同様の体制で研究を推進する予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
順調に研究が進行し、当初予定していた追加実験等で必要となる物品等を購入する費用を軽減することができたため。 次年度の研究費は当初に計画した通り、実験消耗品費(試験用材料、試料加工用関連物品、試薬など)、旅費(研究打合せ旅費、成果発表旅費など)、人件費・謝金(実験補助費、英文校閲費など)、その他(印刷費、論文掲載費など)として使用する予定である。
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