研究課題/領域番号 |
24560891
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 芝浦工業大学 |
研究代表者 |
湯本 敦史 芝浦工業大学, 工学部, 准教授 (20383987)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | ナノ結晶材料 / ナノ粒子 / 超音速ガス流 / シリコン半導体 / 薄膜太陽電池 |
研究概要 |
現在,様々な半導体デバイスとしてアモルファスシリコン(a-Si)膜が主に使用されているが,その電子移動度は多結晶Siの100分の1以下であるため,より高電子移動度を有するデバイスを形成するためにa-Si膜から微結晶Si膜への転換が必要不可欠であると指摘されている.a-Si膜の結晶化技術としてレーザーアニール法や金属誘起結晶化法など様々な手法が用いられているが,工程が複雑になる上,大面積の多結晶Si膜の形成が困難であることや,基板にダメージを与えること等が技術的課題となっている.したがって,後処理工程が必要なくas depositの状態で良質な微結晶Si膜を形成する技術の確立が重要であり,新しいコーティングプロセスの開発が模索されている. 超音速フリージェットPVD(Supersonic Free-Jet PVD: SFJ-PVD)は,生成直後の活性なナノサイズの粒子(ナノ粒子)を5km/s以上の超音速ガス流によって加速・基板まで搬送し,高い速度を付加したナノ粒子を基板上に堆積させることより膜形成させる新しいコーティング法である. H24年度は,超音速フリージェットPVDにより,ガラス基板上にSi膜を形成させ,形成させた膜の組織観察することを研究目的とした. H24年度の研究成果は,超音速フリージェットPVDにより石英ガラス基板上にSi膜の形成を試み,本法により形成されるSi膜が(1)緻密な多結晶体を呈していること,(2)膜組織が数nm~10nm程度の微結晶膜組織であること,をSEM観察,TEM観察およびラマン分光分析から明らかとした.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
H24年度は,超音速フリージェットPVDにより,ガラス基板上にSi膜を形成させ,形成させた膜の組織観察することを計画しており,本法による緻密なナノ結晶Si膜の形成が達成できることを明らかとしており,概ね順調に進捗していると考えている.
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今後の研究の推進方策 |
1. ポリイミド(PI)フィルム上へのSi膜の形成 PIフィルムを基板とし,Si膜の成膜を試みる.なお,成膜後の膜の評価は前年と同様とし,研究の進め方,担当・連帯に関しても前年と同様とする. 2. Si膜-PIフィルム基板間の密着性評価 米国スタンフォード大学Dauskardt教授のリサーチグループ渡邊誠氏(NIMS所属)に協力・補助を頂き,薄膜DCB試験により界面の界面破壊靱性を評価検討する.特に環境劣化による破壊靱性への影響を調査検討することで,半導体デバイスとしての信頼性評価の指針を立てる.なお,本結果により前項1.「ポリイミド(PI)フィルム上へのSi膜の形成」にフィードバックをし,最適な成膜条件の確立を目指す.研究の結果により密着性を高める必要が出てきた場合は,(1)成膜前の基板処理,(2) (a-Si等の)中間層の形成,を検討する. 3. Si-Ge膜の形成 平成26年度に計画しているタンデム型太陽電池の作製に向けて,ガラス基板上にSi-Ge膜を形成させ,成膜条件が及ぼす膜組織・膜特性への影響を評価検討する.Si-Ge膜に関しては文献「T. Matsui and M. Kondo; Influence of alloy composition on carrier transport and solar cell properties of hydrogenated microcrystalline silicon-germanium thin films, Applied Physics Letters, 89, 142115(2006)」を参考に,超音速フリージェットPVDにより膜厚0.8~1.2ミクロンのSi0.6Ge0.4膜を形成させ,評価していくことを予定している.
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度は,形成させた皮膜の体積抵抗測定およびI-V特性を評価することを検討しており,各測定機に併せた治具の購入を計画している.
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