研究課題/領域番号 |
24560892
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研究機関 | 東海大学 |
研究代表者 |
前田 秀一 東海大学, 工学部, 教授 (30580493)
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キーワード | 銀薄膜 / 硫化銀 / 薄膜干渉 / 発色 / ニオブ / 酸化ニオブ |
研究概要 |
平成24年度には銀薄膜の発色剤となる硫化物の成分を特定できたので、平成25年度は、計画通り、銀薄膜の発色機構の解明に注力した。 まず、成分既知の硫化物を用いたときの、発色前後の銀薄膜表面の分析を、走査型電子顕微鏡、X線光電子分光装置、ゴニオフォトメータなどを用いて実施した。表面のモルフォロジーや化学組成と光学的特性や発色性との関係が定量的に明らかになった。特に、X線光電子分光装置による深さ方向への定量分析により、銀薄膜上に硫化銀の薄膜が形成されていることがわかった。これらの結果を解析し、銀薄膜上の硫化銀薄膜形成に起因する薄膜干渉が発色の主原因と考えるに至った。 さらに上記の考えを確認するために、当初の研究計画外ではあったが、薄膜干渉による発色を起こすと一般に言われているニオブとニオブの酸化薄膜についても同様の実験および解析を行った。ニオブの酸化膜は、ニオブを陽極、白金を陰極としたときにクエン酸液を電気分解することによって作製した。印加電圧は0~100Vまで10V刻みで行った。印加電圧の違いでニオブの上に形成される酸化ニオブ膜の膜厚が異なることを走査型電子顕微鏡による断面観察で確認した。この膜厚と酸化ニオブの屈折率をブラックの反射式に代入して計算により得た反射スペクトルとゴニオフォトメータにより実測した反射スペクトルがほぼ一致した。 銀薄膜と硫化銀薄膜の系においても、計算と実測において同様の関係がみられることも明らかになり、薄膜干渉による発色であることが間違いないと考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究実績の概要に記載のように、平成25年度の目的である、銀薄膜の発色機構を明らかにすること、に成功している。
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今後の研究の推進方策 |
本技術の産業への応用を検討する。具体的にはインクジェットプリンターを用いて、インクとなる硫化物の濃度、温度などをコントロールしながら、画像形成を行う。特に、発色に至る時間が短いことや導電性を有するという特長を生かして、加飾分野やプリンティッドエレクトロニクスでの応用の可能性を検討する。 この応用検討において、平成24年度に明らかにした発色に関わる硫化物の性質や平成25年度に明らかにした発色機構に関する知見が、大いに役立つと考える。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成25年度に購入予定だった画像処理装置一式の購入が、フリーソフトで対応できたため、必要なくなったから。 平成26年度は、研究成果を広く公開したいと考えている。論文投稿に関わる費用、学会発表に関わる支出(参加費、旅費)などに充当したい。
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