研究課題/領域番号 |
24560893
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
遠山 岳史 日本大学, 理工学部, 准教授 (40318366)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 組成傾斜型粒子 / 噴霧乾燥法 / アパタイト / マイクロカプセル / 保水材 / 耐水性 / 土壌改良剤 |
研究実績の概要 |
組成傾斜材料の創製は通常複雑なプロセスおよび時間をかけて行うが,本研究は溶解度の異なる2成分を噴霧乾燥する単純なプロセスであり,ワンプロセスで外殻が水酸アパタイト(HAp),内壁にシリカを析出させた組成傾斜型球状中空粒子の作製を目的としている。 平成24年度はHAp/ケイ酸カリウム系組成傾斜型球状中空粒子の作製条件を明らかにし,さらに機械的特性について評価した。平成25年度においては,組成傾斜型粒子の水中安定性の評価及び吸湿・放湿特性について評価を行い,粒子内部に水分を保持・徐放可能であることを明らかにした。 本年度(平成26年度)は作製した中空粒子を実際に土壌中に添加し,保水特性の評価を行うことを目的とし,1) 組成傾斜型球状中空粒子の大量合成,2) 土壌中に中空粒子を添加することによる保水性の評価を行い,以下の結果を得た。 1) HAp/ケイ酸カリウム系組成傾斜型球状中空粒子の大量合成を行ったが,長時間装置を作動させることで目詰まり等が起きることが明らかとなり,装置の改良が必要であるとの結論に至った。 2) 土壌400 gに組成傾斜型中空粒子1.5 gを添加し改質した土壌に水100 cm3を添加し簡易テスターを用いて保水特性について評価したところ,組成傾斜型粒子無添加では4時間程度で土壌中の水分量が減少し始めるが,保水粒子を添加することで8時間程度まで水分量は変化せず,土壌の保水能を向上することが確認できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成26年度は7月までにHAp/ケイ酸カリウム系組成傾斜型球状中空粒子の大量合成を行う計画であったが,大量合成をすべく合成装置を長時間動作させることで目詰まりが多発するなど,装置上の問題点が明らかになった。これを解決するために時間を要し,土壌に添加するための試料が準備できたのが秋口(11月)となった。このため,夏季を利用して土壌の保水試験を行う計画であったが,気温の低い季節の保水評価となったため,次年度の夏季に再試験を行う必要がある。
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今後の研究の推進方策 |
秋口ではあったが,作製したHAp/ケイ酸カリウム系組成傾斜型中空粒子を土壌中に添加することで簡易土壌湿度計により保水特性を示すことを明らかにしている。そこで,今後は夏季の土壌の乾燥化に対応できるかどうか評価するために,夏季に実験を行うことを計画している。さらに,土壌の水分量を精度よく定量化するために土壌水分計を購入し,詳細な検討を行う予定である。 また,HAp/ケイ酸カリウム系組成傾斜型球状中空粒子の作製方法,耐水性などの諸性質については,2015年9月開催のInternational Symposium on Inorganic Phosphate Materials 2015(モロッコ,アガディール)にて発表予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
昨年7月頃に,HAp/ケイ酸カリウム系球状中空粒子を土壌に添加すべく大量合成を行ったが,当初の予定よりも収率が悪く,試料の合成が完成したのが11月頃となった。これにより,土壌中の湿度測定の実施が大幅に遅延してしまった。また,12月に研究成果を海外(モロッコ)で発表予定であったが,大会主催者の都合により翌年に延期されたため,渡航費が未使用となった。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度の夏季までに組成傾斜型空条中空粒子を作製し,土壌湿度測定装置を購入し,保水特性を評価する計画である。また,研究成果はリン酸塩の機能化を対象としているInternational Symposium on Inorganic Phosphate Materials 2015(9月開催,モロッコ)で発表するため,その渡航費および英語論文の校正費用として使用する計画である。
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