研究課題/領域番号 |
24560895
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研究機関 | 金沢工業大学 |
研究代表者 |
瀬川 明夫 金沢工業大学, 工学部, 准教授 (10298325)
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キーワード | 熱間圧延 / 酸化スケール / 変形挙動 / 直接観察 / スケール制御 / 先進率 |
研究概要 |
酸化スケールの変形挙動可視化と動的挙動評価について,Scale Transfer法の実験手法としての精度向上に向けた内容と,圧延実験を行う.ここでは,生成されるスケール厚,スケール組成の制御と,生成のキーポイントであるヘマタイトの使用量について相関関係を明確にし,2次スケール再現性を高めるとともに,実験精度向上を図る. 実施内容は,Scale Transfer法により生成される酸化スケールとヘマタイトの質量変化の定量評価として,真空加熱炉内でのスケール生成量の校正曲線の導出を行った.使用するヘマタイトの質量から,放出される酸素量を定量化し,ヘマタイト質量を変更し2次スケールを付着させたところ,生成されるスケール厚との間に高い相関があることがわかった.ヘマタイト質量が小さい場合は,生成されるスケール量はほぼ比例関係にあり,質量が大きくなるにつれて指数関数的に増加する傾向にあった.しかしながら,スケール厚の厚い領域(8μm以上)での再現性には,実験データのばらつきによる不十分な点があり,更にヘマタイトの分量を調整するとともに,検討を進める. また,ヘマタイトからの放出酸素量での定量化は,ヘマタイト質量換算に相当すると思われるが,生成される酸化スケールの厚みのみの指標となっており,本来鋼板全面での生成酸化スケール体積より,上面,下面,側面のそれぞれの厚みを推定することが精度向上に繋がると思われる.よって,生成する酸化スケール体積からスケール厚みを想定することも検討している. また,スケール有効利用のしきい値同定に向けた真空圧延機での先進率測定に向けた実験遂行のため,現有のロールを用いて先進率測定用ロールを作製する.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度は,現有のヘマタイト粉末を用いたビレット作製と生成スケール観察を重点的に行ったため,実験試料が小片で推移したため,経費も試料補充のみとなった.校正曲線の導出はスケール厚の厚い領域で課題があるが,ヘマタイト放出酸素量と生成スケール厚の相関および相関式の定量化ができたため,実験の進捗としては圧延実験に移行することが可能と判断する. また,先進率測定に適したロールについて大気圧延機でのロール試作と予備実験により,その有効性が検証できたことは,上記スケール定量化と併せ,スケールの有効利用しきい値の同定に繋がるものである.
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今後の研究の推進方策 |
平成26年度は,平成25年度作成の校正曲線について,ヘマタイトの分量を増やし,スケール厚の厚い領域までを定量化する.同時に酸化スケール厚のしきい値を示すことを進める. 実施項目は,①厚い酸化スケールを安定して再現できる校正曲線の確立,②動的挙動解析による鋼板表面性状変化の観察としきい値の同定,を実施する. 項目①については,ヘマタイト量を増量し放出酸素量測定と酸化スケール厚みの測定と併せ,校正曲線の更新を行う.項目②については,薄い酸化スケールを再現し,直接観察 による動的挙動解析を行い,鋼板表面性状に与える影響を明確にする.
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次年度の研究費の使用計画 |
先進率測定用ロールの製作にはロール表面へのマーキング施工を必要とするが,同時にロール表面の研磨を行う必要がある.圧延機用ロールは,上下ロールの表面精度および,直径を高い精度で揃える技術が必要となる.県内業者での施工が困難であることが判明し,ロールの研磨およびマーキング施工は県外業者に委託する必要であり,施工料加え,ロール単体で十数キロの重量があり送料を含めて費用が発生する. 上記の理由により,研究経費として平成26年度分として平成25年度分を調整し26年度分として残している. 先進率測定用ロールの製作として,県外業者へのロール輸送し,圧延用ロール(SKD61種)の表面研磨およびロール径調整を経て,ロール表面への先進率測定用マーキングの施工を行う.マーキング後必要であれば,表面硬化処理も視野に入れる. ロール製作が主たる経費利用となるが,圧延実験に供する鋼板が大量に必要となることが予見され,平成26年度の試材購入の補助としたい.
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