ゼオライトは固体酸触媒として優れた性能を持ち、石油工業において重要な位置を占めている。しかし、寿命が短いという問題が残されている。長寿命化には細孔内触媒点を塞ぐことによる反応速度のコントロールや、反応系の分子サイズにあった細孔径制御が必要であると考えられる。本研究では成膜前駆体をゼオライトの細孔内へ侵入させて、細孔径のみならず細孔内容積をもコントロールすることの可能な侵入型減圧熱CVDプロセスの開発を目標とし、まず始めにCVD時に真空度を連続的に変化させることのできる装置の作製を行った。連続圧力調整はメイン流路に設置した調圧バルブにより、排気速度を調節することにより行った。流路全体の短縮、管径の大口径化、メカニカルブースターポンプの導入、圧力調整用ボールバルブの導入により、最終的に約10Pa(ガス無供給時)から約1700Pa(キャリアN2ガス100SCCM供給時)までの連続減圧に成功した。次に原料TEOSを用いたSiO2析出実験を行った。減圧度、CVD温度(773K、873K、973K、1173K)、キャリア流量(25、50、75、100SCCM)を種々変化させ成膜速度分布ならびに成膜状況の電子顕微鏡観察を行った。成膜速度はCVD反応器長さ方向(約50cm)における反応前後の反応管(溶融石英管の二重構造とし、内短管(2cm)の内部に析出させる方法)の局所重量変化を定性的に分析した。実験範囲内の高温反応時では流れ方向成膜速度単調減少、それ以外の温度では一定の分布となることが分かった。キャリア流量による変化は小さかった。電子顕微鏡による成膜性状の観察結果、973Kにおいてなめらかな膜が得られた。これは、この温度において表面反応速度が律速となることを裏付けており、今後成膜メカニズムの解明とともに、この条件を中心にCVD条件の最適化を図る必要のあることが分かった。
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