研究課題/領域番号 |
24560904
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 室蘭工業大学 |
研究代表者 |
清水 一道 室蘭工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (60206191)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | レアアースレス / 球状黒鉛鋳鉄 / 薄肉化 |
研究概要 |
球状化処理方法の変更による高強度球状黒鉛鋳鉄製造技術の開発として、真空誘導溶解炉を使用し摂取方法および種々の接種剤の違いについて試験材料の製作を試みた。接種剤として、レアアースを含有した従来の接種剤(Bi)とレアアースレスの接種剤(Ca)の2種類を用い、接種方法として、取鍋接種および注湯流接種を行ない、階段状試験片を用いて薄肉化した球状黒鉛鋳鉄の組織観察、球状化率、黒鉛粒数などを評価した。 組織観察の結果から、肉厚3mmから5mmの部分にはチルが確認され、レデブライト組織となっていた。また、取鍋接種のみの試験片は肉厚6mmから8mmの部分でもチルが確認された。取鍋接種のみの試験片と比較して注湯流接種を施した試験片の黒鉛粒数の増加量は2倍以上であった。取鍋接種のみの試験片の場合Bi接種試験片の方が黒鉛粒数を多く確認されたが、注湯流接種をした試験片では接種剤の違いによる黒鉛粒数の影響は見られなかった。このことから、薄肉鋳物の場合、注湯流接種を行うことによってレアアースレス接種剤でも黒鉛粒数の向上を見込め、チル化抑制が可能だと考えられる。 また、同様の成分配合を行った試験ブロックより、シャルピー衝撃試験用の試験片を切出し、シャルピー試験を行った。取鍋接種と注湯流接種を施した供試材は-20℃で10J以上の衝撃吸収エネルギーを示した。なかでも、Bi接種供試材は-40℃でも10J以上の衝撃吸収エネルギーを示した。組織観察および黒鉛粒数測定の結果から、Bi接種供試材は延性破壊を誘起する球状黒鉛の数が多く、組織より微細化していたためである。この結果から、注湯流接種が球状黒鉛鋳鉄の組織および機械的性質の改善に有効であると明確になった。また、レアアースレスのCa接種剤でも、-20℃で10J以上の衝撃吸収エネルギーを示したことから、レアアースレス接種剤でも接種による組織改善は可能であると考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
レアアースレスとした球状黒鉛鋳鉄材料を開発するために、現在最適な接種方法の検討および、代替材料の選定を行なっている。接種方法では、取り鍋接種および取り鍋+注湯流接種の2種を行うことが最適であり、また代替材としてカルシウムを使用した材料の開発を進め、摂取方法と接種材の選択は100%確立された。開発材料の耐摩耗性など機械的性質の評価としては、開発された材料を用いて、黒鉛の球状化率、粒数、粒径、面積率の測定やシャルピー衝撃試験や、引張強度、硬度測定を行い、材料の強度評価を行なっている。実験の結果、エロージョン摩耗試験では普通鋳鉄の約2倍の耐摩耗性向上、シャルピー衝撃試験では低温度域[-20℃]で12J 以上の衝撃値、耐すべり摩耗試験ではこれまでと同等の耐摩耗性を有するなどの成果が出ており、計画内容はおおむね達成している。薄肉鋳鉄技術の実用化に向け、階段状試験を用いて、取り鍋接種および取り鍋+注湯流接種の2種、接種剤としてカルシウムを使用した材料の組織観察、硬さ試験を行い、薄肉化技術の確立を90%以上達成している。
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今後の研究の推進方策 |
前年度に引き続き、真空誘導溶解炉を使用し摂取方法および種々の接種剤の違について試験材料の製作を試み、各種評価を行う。前年度の結果から、3mm以下の薄肉部分でチル化したケースとチル化しないケースがあった。レアアースレス接種剤を使用した際に薄肉部分でのチル化を抑制するため、他のレアアース球状化剤・接種剤の検討を行う。また、試験を行った各種材料(レアアースレス材)を用い、実体の試験製品を作成し、レアアースレス薄肉球状黒鉛鋳鉄製造技術の開発として球状黒鉛鋳鉄を薄肉化する際、厚肉部から薄肉部へ変化する肉厚変動部で発生する問題点(①寸法精度、②引け巣欠陥、③チル化、④残留応力)、また小型シャルピー衝撃試験機を用いて、実体からの試験片切り出しによる試験を行ない、衝撃特性などについて調査を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度は、試験材料の製造に係る原料などの消耗品および、これまでの成果を国内外の学会へ投稿・発表を行ない、意見等を今後の研究へ反映する。
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