研究実績の概要 |
昨年度までの研究より,レアアース含有量0%と2.0%の球状化剤を使用した球状黒鉛鋳鉄による疲労試験を行った結果,レアアース含有量0%では試験片内部に存在する鋳造欠陥によって疲労強度が低下した.そこで,得られた知見を元に球状化剤のレアアース含有量を調整し,製造した薄肉の球状黒鉛鋳鉄によって各種試験を行うことで,レアアース含有量による黒鉛の球状化率や機械的性質に及ぼす影響を調査した. 球状化剤中のレアアース含有量を0%と2.0%に加えて0.3%と0.5%を使用し供試材を製作, 厚さを3,5,8mmの3段とした階段状試験片によるチル化測定を行なった. 球状化剤中のレアアース含有量を変化させた場合でも肉厚によって黒鉛球状率および黒鉛粒数は低下せず,チル化に関しても肉厚3mmにおいてチル化を抑えており,良好な性質を示した. また同様の材料を用い, レアアース含有量を調整した球状化剤を使用し,疲労試験を行った.レアアース含有量によっても組織,機械的性質に差はなく良好であるため, 平滑材に加工し,繰返し速度20Hzの正弦波荷重,応力比を-1とし,平面曲げ疲労試験を行った. レアアース含有量2.0,0.5,0.3%では309~339MPaであったのに対し,0%では270MPaであり,疲労強度は13%~20%低下した.その要因を調査するため破断した試験片の破面を観察し破面に鋳造欠陥が確認された.欠陥の大きさを力学的に定量評価するために√areaパラメータモデルを用い評価を行った. レアアース含有量0%の試験片では⊿K/⊿Kthが1.44,1.47とレアアースを含有した球状化剤と比較して大きいことが疲労強度を低下させたと考えられる.レアアースを含有した球状化剤における⊿K,⊿Kthの差は小さかったことから,レアアース含有量は0.3%まで低減可能である.
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