研究課題/領域番号 |
24560906
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 秋田大学 |
研究代表者 |
田口 正美 秋田大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (90143073)
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研究分担者 |
齋藤 嘉一 秋田大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (10302259)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 製造プロセス / 電解プロセッシング / 不溶性アノード |
研究概要 |
(1) 粉末圧延法によるヘテロ構造Pb-Ag合金アノードの製造と材料特性試験:大気中溶解・鋳造によりPb-1.0mass%Ag合金を調製し,これを圧延した現行型の不溶性アノードを作製した.また,Pb-1.0mass%Ag合金から大気中アトマイズによりアトマイズ粉末を調製し,粉末圧延により新規不溶性アノードを作製した.EPMA等の観察から,新規不溶性アノードは微細結晶の集合体であり,結晶粒界に酸化物が濃縮したヘテロ構造を有することが判明した.(2) 電気化学腐食クリープ装置での耐クリープ性評価:「電気化学腐食クリープ装置」を用いて,Pb-Ag合金不溶性アノードの耐クリープ性を調査した.Pb-Ag合金のクリープ速度は,(a)大気中 < (b)H2SO4電解液中 < (c)H2SO4電解液中通電下の順に増大した.ところが,新規不溶性アノードはH2SO4電解液中通電下においても卓越した耐クリープ性を発揮することが確認できた.(3) 定電流電解によるZn電解採取用不溶性アノードとしての特性評価:Zn電解採取用不溶性アノードとして採用するには,電解効率に優れると同時に,製品Zn中の汚染Pb量を抑制できる化学的安定性が重要である.本課題では,定電流電解試験にてこれら必須事項を調査し,新規不溶性アノードの優位性を確認した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
研究計画書のスケジュール通りに実験等が進展している.加えて,平成25年度の予定される「新規Pb基アノードのエネルギー効率の改善」に関する予備的な実験を実施できた.
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今後の研究の推進方策 |
(1) 酸素過電圧の低減によるエネルギー効率の改善:Zn電解採取におけるアノード反応は酸素発生反応であり,現行のPb基合金不溶性アノードでは,その高い酸素過電圧が重要な技術的課題となっている.すなわち,不溶性アノードにおける酸素過電圧の上昇は,Zn電解採取の実際分解電圧の増大をもたらし,最終的には電力原単位つまり生産コストの上昇に直結する.本課題では,交流インピーダンス計測を併用し,定電流電解におけるアノード反応の電荷移動抵抗Rctおよび等電気二重層容量Cdlを系統的に調査し,現行のPb基合金不溶性アノードにおける高い酸素過電圧の支配因子を究明する.また,低酸素過電圧の酸化物触媒を分散させたPb基不溶性アノードを作製し,電解プロセスにおけるエネルギー効率の改善と生産コストの低減を図る.(2) 電極プロトタイプの製造および電解効率と耐久性に関する加速試験:新規不溶性アノードの基礎データを収集するため,サイズアップした電極プロトタイプを製造し,高温・高濃度H2SO4電解液中において加速的電解試験を実施する.ここでは,槽電圧,アノード電位,カソード電位を計測し,電流効率ならびにエネルギー効率を算出するとともに,カソード析出Zn中の汚染Pb量をICP-MASSにて分析し,耐久性評価の指標とする.また,電解後のアノード表面状態ならびに化学結合状態をXRDとXPSで分析し,電極寿命・特性に及ぼす結晶組織ならびにサイズアップの影響を明らかにする.
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次年度の研究費の使用計画 |
新規Pb基アノードを製造して,Zn電解採取試験による電解効率ならびに耐久性の調査を実施する.そのため,設備備品・消耗品に990,000円を,計測機器使用料等に120,000円を当てる.また,研究打合せおよび成果発表の旅費に390,000円を充当する.
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